共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

寒冷域における越境大気汚染物質の光学特性
新規・継続の別 継続(平成14年度から)
研究代表者/所属 富山大学院理工学研究部
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 青木一真

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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藤吉康志 北大低温研

研究目的 寒冷域のエアロゾルの光学的特性を観測するため、1997年7月より北海道大学低温科学研究所(札幌市)の屋上において、太陽光を使った大気放射観測を行ってきた。観測当初の目的としては、大陸から寒冷域に輸送される黄砂粒子や森林火災の影響及び、札幌のローカルな大気汚染に着目していた。しかしながら、急激な経済発展により北東アジアの大気汚染も増加傾向にあり、寒冷域における越境大気汚染物質の動態を示すことが重要となってきた。このような観測を継続することによって、その光学的特性の経年変動並びに、その越境大気汚染物質の気候影響についての解明を行っていく。
Fig.1 2008年1月から12月までの札幌におけるエアロゾルの光学的特性の月平均地  
研究内容・成果 太陽光の直達光と周辺光の角度ごとの放射輝度を自動観測できるスカイラジオメーターを使って、晴天時の日中に10分おきに連続測定を北海道大学低温科学研究所屋上にて行ってきた。得られた物理量を計算し、エアロゾルの光学的特性(各波長のエアロゾルの光学的厚さや一次散乱アルベド、オングストローム指数)や体積粒径分布などを示してきた。Fig.1は、2008年1月から12月までの札幌における0.5 μmのエアロゾルの光学的厚さの月平均値(上図)、オングストローム指数の月平均値(中図)、0.5 μmの一次散乱アルベドの月平均値(下図)を示したものである。札幌上空のエアロゾルの光学的特性の季節変化は、観測初期の測定結果(Aoki and Fujiyoshi,2003)と同様に、エアロゾルの光学的厚さは、春に高く、秋に低い傾向を示している。2005, 2006年の報告では、6月の光学的厚さが最大値となり、雲や雨などの影響による影響を受けている可能性があったが、それだけの影響ではない可能性が、他の観測地点でも得られているため、今後の課題である。また、2007年は、5月に最大値となっていたが、2008年も同様に春(4, 5月)に光学的厚さが最大となり、黄砂粒子のみならず、越境大気汚染物質の影響を捉えることが出来たのではないかと思われる。エアロゾルの粒子の大小の指標としてのオングストローム指数の季節変化は、あまりはっきりした季節変化が見られなかったが、夏に高く、冬に低い傾向が示されている。次に、エアロゾル粒子の吸収・散乱効果について調べるために、一次散乱アルベドの季節変化を見てみると、はっきりとした傾向はつかめられないが、春と秋に低く、夏と冬に高い傾向にある。他の年や他の日本の場所では、明瞭な季節変化は、見られていないが、寒冷域の特徴をつかむため、今後も、さらに詳しく検証していきたい。本観測研究を継続は、過去のデータとの比較、および高緯度地域の経年変化を示す上で重要であり、地球温暖化解明の重要な基礎データとなると考える。
Fig.1 2008年1月から12月までの札幌におけるエアロゾルの光学的特性の月平均地  
成果となる論文・学会発表等 K. Aoki, (2008), Aerosol and cloud optical properties by ground-based sky radiomter measurements, Proceedings of SPIE, 7027, doi: 10.1117/12.822504.
Irie, H., Y. Kanaya, H. Akimoto, H. Iwabuchi, A. Shimizu, and K. Aoki (2008), First retrieval of tropospheric aerosol profiles using MAX-DOAS and comparison with lidar and sky radiometer measurements, Atmos. Chem. Phys., 8, 341-350.
青木一真 (2008), エアロゾルの気候と大気環境への影響(第6章執筆:太陽放射観測から見るエアロゾル), 気象研究ノート、日本気象学会、第218号、81-91.