共同研究報告書


研究区分 研究集会

研究課題

低温凝縮系における水素の化学と物性
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 東大生産研
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 福谷克之

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

青木勝敏 原研(Spring-8) 研究主席

2

下村浩一郎 高エネ研 助手

3

立川仁典 横浜市大・JSTさきがけ 準教授

4

関谷 博 九州大 教授

5

並木 章 九州工業大学 教授

6

秋葉悦男 産総研(つくば) グループ長

7

鹿内 文仁 高エネ研 研究支援推進員

8

清水克哉 阪大極限科学研究センター 教授

9

長柄一誠 阪大基礎工 助手

10

加藤浩之 理研(和光) 先任研究員

11

山川浩二 愛媛大工 教授

12

白浜圭也 慶応大理工 助教授

13

杉本秀彦 中央大学理工学部 教授

14

常行真司 東京大学大学院理学系研究科 助教授

15

吉信 淳 東京大学物性研究所 助教授

16

久保田実 東京大学物性研究所 助教授

17

荒木秀明 長岡高専 講師

18

熊谷 純 名大院工 助教授

19

星野公三 広島大学総合科学部 教授

20

西山樟生 高エネ研 教授

21

池田 進 高エネ研 教授

22

富永 靖徳 お茶の水女子大 教授

23

赤木和人 東大院理 助手 

24

山脇 浩 産総研(つくば) 研究員

25

館山佳尚 物材機構 研究員

26

衣川 健一 奈良女子大 助教授

27

原田修治 新潟大学自然科学系 教授

28

白井光雲 阪大産研 助教授

29

中西 寛 阪大基礎工 助手

30

渡部直樹 北大・低温研 助教授

31

香内 晃 北大・低温研 教授

32

八木駿郎 北大電子研 教授

33

渡部直樹 北大低温研

研究集会開催期間 平成 19 年 12 月 13 日 〜 平成 19 年 12 月 15 日
研究目的 水素は宇宙空間に最も豊富に存在し,宇宙化学反応で主役を演じる元素である.水素原子核の質量は小さいため、固体や表面で大きな振動エネルギーと波動関数の広がりをもつ.このため,低温における水素の拡散や反応,プロトン移動では,トンネル効果に代表される量子効果が顕著に現れ,興味深い研究対象となっている。これらの研究では、最近新しい実験手段と計算方法が開発されるにつれて,これまで個別に進められてきた研究分野に共通点が見出され,相互の理解が深まりつつある.そこで,本研究集会では,地球・惑星科学,物理学,化学,天文学を専門とする研究者が一同に介し,水素の化学と物性に焦点を当て集中的に討論することを目的とする。
  
研究内容・成果 水素は,金属における水素吸蔵,燃料電池における触媒反応やプロトン伝導,生体におけるプロトン移動など,さまざまな舞台で興味ある現象に深く関わる元素である.本研究集会では,凝縮系における水素の化学と物性と題し50名を越える参加者のもと,3日間にわたり32件の発表が行われ活発な討論が行われた.主題は大別して,固体表面,金属,生体,固体水素,氷・ハイドレートであり,以下にそれぞれの内容を述べる.
金属や酸化物,氷の表面は様々な触媒効果を持つことが知られており,特に水素の関わる水素化・脱水素化反応では量子的なトンネル過程が重要な役割を果たし,さらに核スピンの関係するオルソーパラ転換など興味深い反応がある.氷表面での水素原子の関わる化学反応(日高,宮内,羽馬,飯田),金属表面での水素のオルソーパラ転換(二木,元島),SiやRh表面での水の反応と氷形成(赤木,紅谷),グラファイトや金属表面での水素イオンのエネルギー・電荷移動(伊藤,数納),固液界面のシミュレーション(杉野)に関する報告があった.
金属の中には,水素吸蔵性の高い金属が存在し,水素を吸収すると同時に物性が大きく変わる場合がある.水素吸収は金属表面で起こるため,表面の原子過程が重要な役割を果たす.Pd表面での水素吸収に関して,実験・理論両面から報告され(Wilde,尾澤),さらにPdHのフェルミ面測定の結果が報告された(櫻井).希土類水素化物の水素誘起金属―絶縁体転移についてはその機構が論争となっているが,水素原子の変位の可能性が示唆された(町田,青木).また,水素吸蔵系を低温高密度プラズマとしてとらえ,核反応断面積の増大が遮蔽エネルギーの観点から議論された(笠木).
 固体水素は量子固体という性質を持つ.固体パラ水素中にH6+が存在することが示され(熊谷),ミュオン触媒核融合では重水素の凝縮効果や回転状態の効果があることが示された(石田).また液体水素の量子ダイナミクス計算の結果が報告された(中山).
 水素の興味深い点は,プロトンとして水やタンパク質中を移動し,生体反応や燃料電池で中心的な役割を担う点にある.水中プロトン移動はグロットゥス機構が広く受け入れられているが,その起源と最近の進展について解説がなされた(深井).さらに,水分子中プロトンのダイナミクス(池田,岩野,佐野,深澤),ハイドレート中の水素移動(奥地,中越),タンパク質中の水と水素の移動(神取,池口,水谷),誘電体中のプロトン移動(鹿内)について詳細な研究報告があった.
 水素を研究する上では新たな実験方法や計算方法の開発が不可欠である.中性子散乱や動的核スピン偏極(熊田)の紹介がなされたのは本研究会ならではの特徴といえる.