共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
不凍糖たんぱく質水溶液中で成長する氷結晶界面におけるステップ列の挙動解析2 |
新規・継続の別 | 継続(平成18年度から) |
研究代表者/所属 | 学習院大学計算機センター |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 横山悦郎 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
古川義純 | 北大低温研 |
研究目的 | 動植物の耐凍・耐寒戦略として注目されているメカニズムの一つとして,生体内における氷結晶成長の抑制促進効果がある。極地の氷海に住む魚は,過冷却した状態にもかかわらず,凍結しないで生き延びることができる。この現象は,魚の体液中に極微量含まれる不凍糖タンパク質(AFGP)あるいは不凍タンパク質(AFP)が,氷と水の界面に吸着することで氷結晶の成長を抑制すると考えられている。これらのタンパク質の存在下で,共焦点蛍光顕微鏡を使って成長する氷結晶界面の挙動の「その場観察」が行われている。本研究では,それらの観察動画像から時空間画像を作成する手法を提案し,界面やステップ列の挙動を時系列データとして解析する。 |
研究内容・成果 | 計算機を使って,動きに関する情報を獲得する手法には,一般に主に二つの方法がある。一つは,時空間勾配法とよばれ,画面上の移動ペクトル分布(オプティカルフロー)を求めることができる。この手法を使って,例えば,流体の流れ,更には海氷の動きを可視化することが可能である。もう一つは,時空間画像を使った手法である。画像をサンプリングする速度が,画像の変動に比べて十分に速いならば,画像は時間軸方向に連続的に変化する。時空間画像とは,この条件を満たす動画像を使って作られる, 画像の2次元空間座標に時間軸を加えた3次元ボリュームのことである。このボリュームから,時間軸方向に平行な断面画像を作成すると,その画像上には物体の運動軌跡が現れる。この断面画像は,時空間断面画像とよばれる。本研究では、昨年に引き続き時空間断面画像を作成し挙動を解析した。 図1は,蛍光ラベルを付けたAFGP水溶液中で成長する氷結晶が成長する様子を記録した共焦点画像である。このその場観察で記録された動画像は1秒間に30枚の画像を含む。この時空間画像から,図1の黒色の線で時間軸方向に平行な断面画像を作成したものが図2の時空間断面画像である。図2には,界面の運動の動きが,軌跡として画像化されている。横軸は図1の黒色線に対応する空間軸であり、縦軸が時間を表し、5.5秒間である。輝度の変化から成長していないピラミダル面の増加速度を定量化できる。図2では、黄色線1と2の傾きが界面の増加速度を示している。この解析法を使えば,時空間画像を作成する時間サンプリング間隔を大きくしたりすることで,ゆっくりした結晶成長速度を読み取ることもできる。時空間断面画像を使った非定常現象の解析は,結晶の成長速度やステップの運動だけでなく,環境相の観察にも適用できる。即ち干渉縞画像から作られる時空間断面画像を使って,濃度または温度の時間変化も可視化できる。 |
成果となる論文・学会発表等 |
E.Yokoyama, S.Zepeda and Y. Furukawa, A model for antifreeze glycoprotein adsorption at an ice-solution interface, 15th International Conference on Crystal Growth, Salt Lake City, USA, August(2007). E.Yokoyama, S.Zepeda and Y. Furukawa, A theoretical study of the kinetic effect of AFGP adsorption on ice, American Chemical Society National Meeting, Boston, USA, August(2007). |