共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
変温動物の異物認識とタンパク質の濃度変化について |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 北海道札幌藻岩高等学校 |
研究代表者/職名 | 教諭 |
研究代表者/氏名 | 野口浩史 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
落合正則 | 北大低温研 | |
2 |
片桐千仭 | 北大低温研 |
研究目的 | 本研究は、動物の生体防御の方法の中で、異物認識と免疫システムについての関係をタンパク質の濃度変化に着目して明らかにすることを目的とした。実験動物はアフリカツメガエルを、異物には大腸菌を用いた。 |
研究内容・成果 | 1 結果 (1)全血中のタンパク質 まず初めに,大腸菌(2.8×10^3コロニー/μl)50μlを注射したアフリカツメガエルから採取した血液10μl中に含まれるタンパク質をゲル濃度7%のSDS電気泳動で調べた。比較的移動度の小さい分子量の大きな部分で差が見られた(図1、バンドA)。このバンドAは,大腸菌を注射した場合にのみ存在が確認された(図2)。また,移動度の中間付近では,大腸菌の注射の有無に関係なく存在するバンドBの濃度が大腸菌の注射によって著しく増加することがわかった。次に各バンドの濃度を解析ソフトImage Jで分析したところ,その差は注射3日目で特に顕著に表れることが明らかになった。 次にゲルの濃度を14%にして分子量の小さいタンパク質について調べた。確認された中で一番移動度が大きく,大腸菌の注射の有無に関わらずバンドCが存在することがわかった(図2)。このバンドの濃度を分析したところ,バンドCはバンドB同様に大腸菌注射3日目で濃度の差が最大になることがわかった(図2)。 (2)分子量の計算について 電気泳動の結果から縦軸にLog10分子量,横軸に移動度をとり,近似直線を求め,分子量を計算した。バンドAは160kDa,バンドBは68kDa,バンドCは2kDaであることが分かった。 2 考察 免疫は大きく分けて、抗原抗体反応に代表される獲得免疫と比較的低分子量の抗菌タンパク質が働く自然免疫がある。 まず、今回確認されたバンドA,B,Cが抗原抗体反応(獲得免疫)に関係しているかを考えた。抗原物質が体内に侵入すると,さまざまな反応の結果作られる抗体タンパク質が免疫グロブリンといい,分子量約5万の長鎖と,分子量約2万5千の短鎖からなる。この分子量は今回確認されたバンドA,B,Cの分子量とは大きく異なるので,バンドA,B,Cは抗原抗体反応に関係していないことが考えられた。さらに抗原抗体反応の速さを比べてみると,抗原抗体反応において抗原タンパク質量がピークを迎えるのは早くても15日かかる。しかし,今回確認されたバンドA,B,Cのタンパク質量は3日と,とても早い時期にピークを迎えたのでバンドA,B,Cは抗原抗体反応に関係していないことが予想された。 アフリカツメガエルの免疫については,「マガイニン」と「マガイニン2」という抗菌タンパク質がすでに見つかっている。また,その分子量は約2,400とほぼバンドCと等しいことが分かったので,バンドCにはこれらが含まれていると考えた。未知のタンパク質であるバンドA,Bの精製を試みたが微量であるために精製はできなかった。しかしながらバンドA,BはバンドCとほぼ同様に濃度が変化したので,バンドA,Bに含まれるタンパク質も自然免疫に関係している可能性が示された。 |
成果となる論文・学会発表等 |