共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

原始惑星系円盤における低温物質進化
新規・継続の別 継続(平成17年度から)
研究代表者/所属 東工大地球惑星科学
研究代表者/職名 助教授
研究代表者/氏名 中本泰史

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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山本哲生 北大低温研

研究目的  本課題では、原始惑星系円盤内における低温固体物質の熱進化過程に注目する。特に、円盤内で加熱を受けた固体微粒子(氷やシリケイト)が溶融,蒸発,再固化,結晶化する過程の解明を目指す。これらは,隕石内に見られる構造物であるコンドリュールやマトリックスの形成過程を解明する上で重要な知見となることが期待される。
  
研究内容・成果 本年度はおもに,コンドリュールの形成過程に関して議論を行った。
コンドリュールとは,多くの隕石内に見られる直径1mmほどの球形のシリケイト組成構造物である。その鉱物学的特徴や年代測定結果などから,これらは,太陽系形成初期,原始太陽系星雲内でシリケイト組成の固体微粒子(コンドリュール前駆体)が短時間に加熱され溶融し,その後,冷却・再固化して形成されたと考えられている。しかし,その再固化過程をよく調べてみると,完全溶融したシリケイト溶液内では結晶核が成長しづらいことから,シリケイト溶液も結晶化しづらいことがわかっている。それにもかかわらずコンドリュールのほとんどは結晶となっているので,これは,何らかの異物(結晶核)が溶融中に混入し,それをきっかけに結晶化したことを示唆している。このことを踏まえ本課題に参加する共同研究者らが議論し,コンドリュール形成時には溶融シリケイト球に対して結晶核となるような固体微粒子が存在していたこと,そしてそれらが適当な時間のうちに衝突するような環境であったことなどが推察されるに至った。
さらには,コンドリュールはシリケイトの一部が蒸発するような高温を経験していたことから,その蒸発物が再凝縮すると何になるかを検討することによって,マトリックスの形成過程についても議論を行った。その結果,ほとんどのコンドリュール形成環境においては,蒸発した原子は均質核形成を経て固体微粒子に凝縮することがわかった。これは,観測されているマトリックスの特徴とも一致し,マトリックスとコンドリュールがほぼ同時に同じ環境で形成されるとする考え方を支持するものである。

  
成果となる論文・学会発表等