共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

スマトラ島における対流システム日変化と季節内振動変調に果たす役割の解明
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 独立行政法人海洋研究開発機構
研究代表者/職名 サブリーダー
研究代表者/氏名 森修一

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

櫻井南海子 独立行政法人海洋研究開発機構 ポスドク研究員

2

濱田純一 独立行政法人海洋研究開発機構 研究員

3

藤吉康志 北大低温研

4

川島正行 北大低温研

研究目的 海洋研究開発機構では2005年度より「地球観測システム構築推進プラン・海大陸レーダーネットワーク構築(HARIMAU)」において,北海道大学低温科学研究所と共にインドネシア・スマトラ島における観測研究を実施中である.本共同研究では2年に渡り実施した共同ドップラーレーダー観測を基に,海洋大陸域における対流系が持つ2大変動モードである日周期変化と季節内振動について,各々の変動が持つ時空間特性およびそれらの相互作用を観測的に明らかにする.特に,インド洋に面したスマトラ島西岸部において日周期で海陸間移動する対流系と,沿岸海洋域および陸面(後背山地)間における(熱)力学的相互作用の解明を目指す.
  
研究内容・成果  2006年度には,インドネシア・スマトラ島おけるMJOオンセットを研究対象としたHARIMAU2006集中観測(2006年10-11月)を設定し,インド洋に面したスマトラ島西岸2地点(Tiku[0.40S, 99.92E, 3 m above ASL]およびMIA[0.78S, 100.30E, 5 m ASL])におけるデュアルドップラーレーダー観測を実施した.2007年度はは当該データセットの解析を精力的に行った.
 HARIMAU2006観測期間を通じた対流活動の日周期変化特性を解析したところ,TRMM衛星観測による先行研究に示されていたように午後に脊梁山脈山麓部で発生した対流系が,一部はその周辺で発達かつ衰弱する傾向をもつものの,対流系の主体は夕刻(18LT)頃から海岸線を越えて沿岸海上に移動する様子を見ることができた.移動する対流系は海岸線付近で一旦衰弱するものの夜間(21LT以降)に再発達し,翌日午前中一杯まで維持されることが観測された.一方,TRMM衛星データで示されていた夜間における内陸部への移動については,今回の観測では現れなかった.観測された対流系の移動速度は約4m/sであり,日変化する海陸風循環の上層に吹いている北東風の風速とほぼ一致していたが,これはえTRMM衛星観測で示された移動速度よりも大幅に小さいものであった.また,夜間海上における対流系の再発達時には,a)既存の対流系の前方に次々と新しい対流セルが生成されるもの,b)陸上で成熟した対流から大きく海上に拡がったanvilの下方で新しい対流セルが生成かつ成長するもの,c)新たに顕著な対流セルの生成は見られないものの,風の鉛直シアが大きい海上に移動するにつれて親対流自身が徐々に発達するもの,の3つのパターンを確認することができた.今後は更なる解析を進め,沿岸海上のおける対流系の夜間再発達メカニズムを調べる予定である.
 2007年度には副雨季から乾季の入りにおける降水システムの日変化構造およびその動態を詳細に得るため,昨年度同じ2地点における第2回デュアルドップラーレーダー集中観測HARIMAU2007を2007年4月14日〜5月25日の間に実施した.やはり昨年度同様に観測期間の初期にはレーダー機器のトラブルが起きてデータに欠測が生じたが、それを除けばほぼ全ての期間についてデータを取得することができた.この期間中に熱帯収束帯の北上に伴う雨季から乾季へ変化が起こった.レーダーで観測された日周期性の降水にも明瞭な変化が見られ,陸上の降水は雨季と乾季で顕著な違いはないが,海上では乾季には殆ど雨が降らなくなることが分かった.
  
成果となる論文・学会発表等 Mori, S., Hamada Jun-Ichi1, N. Sakurai1, H. Fudeyasu, M. Kawashima, Y. Fujiyoshi, F. Syamsudin, J. Matsumoto, and M. D. Yamanaka, 2007: Overview of the HARIMAU2006 Intensive Observation for Diurnal to Intraseasonal Convective Variability Study over Sumatera Island, Indonesia. IUGG, 2-13 July 2007, Perugia, Italy.
森 修一,濱田純一,櫻井南海子、筆保弘徳,佐々木太一,伍 培明,一柳錦平,川島正行,藤吉康志,橋口浩之,Fadli Syamsudin,Emrizal,松本 淳,山中大学,2007:スマトラ島沿岸域における対流系の日周期移動および海上における再発達について-HARIMAU2006観測結果-.日本気象学会2007年度秋季大会,2007年10月14-16日,札幌.