共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

土壌凍結深の立地間差における土質の影響評価
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 北海道立林業試験場
研究代表者/職名 研究職員
研究代表者/氏名 真坂一彦

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

鳥田宏行 北海道立林業試験場 防災林科長

2

佐藤創 北海道立林業試験場 森林環境部主任研究員

3

今博計 北海道立林業試験場 研究職員

4

曽根敏雄 北大低温研

研究目的 土壌凍結は寒干害というかたちで樹木の生存に大きな影響を与える。北海道太平洋岸の地域は、寒冷寡雪地であることから冬季に土壌凍結による寒干害が発生することがある。しかし、被害地では、被害の立地間差が観られることがあり、それには土質による土壌凍結の発生状況の違いが関与している可能性がある。ところが土質と土壌凍結の関係についての知見はきわめて少ない。そこで本研究では、実際の野外での土壌凍結深と地温・気温の観測に加え、低温室において土壌凍結の進行状況を観測することで、寒干害に関わると考えられる土質と土壌凍結の関係について評価することを目的とする。
  
研究内容・成果 1)調査目的と調査方法
 土質による土壌凍結・融解プロセスの違いを評価するため,寒干害が発生している日高町豊郷のクロマツ海岸林造成地において,苗木が植栽されている客土部(火山灰土;客土区)と植栽列間の砂地(砂区)に土壌凍結深計を設置し,冬季間,定期的に凍結深を観測した(2006年〜2007年,および2007年〜2008年)。この野外観測では,土壌凍結の抑制効果を検証するため,カラマツ材による木材チップを15cm深で敷き詰めた区画も併せて作った(チップマルチ処理)。一方,室内実験として,当造成地から土壌を採取し(火山灰土2種類と砂質土壌1種類),北大低温研融雪試料室内(-10℃)に設置した土壌凍結深観測装置において,深度別に地温を測定した。このとき,土壌含水率の違いと木材チップの有無による凍結・融解プロセスへの影響を評価するため,1番目の実験として,含水率0%の風乾土壌を用いて冷却・加温処理を行った(「風乾土壌」実験)。次に,土壌水分の影響を評価するため,体積含水率にして10%の純水を含ませた土壌サンプルに対し,冷却・加温処理を行った(「湿性土壌」実験)。そして最後に,地表へのチップマルチ効果を検証するため,地表をカラマツ材チップによって厚さ約15cmで覆った湿性土壌に対し,冷却・加温処理を行った(湿性土壌+チップマルチ」実験)。
2)結果と考察
 日高町豊郷のクロマツ海岸林造成地における2冬の土壌凍結深の観測では,つねに砂区よりも客土区の凍結深が深い傾向が認められた。このとき,砂区は客土区よりも早く融解した。これは,土質によって,土壌の凍結速度や融解速度が異なることを意味している。また,チップマルチ処理により,砂区・客土区,いずれの土壌も凍結深が浅くなったが,融解完了期が遅くなった。これは,低温に対する断熱効果が働いたために凍結深が浅くなった一方で,気温上昇期にも断熱効果が作用し,融解が遅くなったものと考えられる。
 室内実験における「風乾土壌」実験では,冷却期間,および加温期間に,地温はそれぞれ単調に低下,および上昇した。しかしながら,「湿性土壌」実験では,冷却期間,および加温期間に,地温が0℃付近で推移する期間が存在した。これは,凍結,および融解時における潜熱によるものと考えられる。以後,この期間を固-液平衡期間と呼ぶ。固-液平衡期間の土質による違いは,冷却期間よりもむしろ加温期間に顕著に現れ,その差異は,チップマルチ処理によってさらに明瞭になった。
  
成果となる論文・学会発表等