共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
水の酸素・水素安定同位体組成からみた雲底下における雨滴と水蒸気の交換過程の解明 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 名古屋大学地球水循環研究センター |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 檜山哲哉 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
阿部 理 | 名古屋大学大学院環境学研究科 | 助教 |
2 |
池田健一 | 名古屋大学地球水循環研究センター | 研究員 |
3 |
栗田直幸 | 海洋研究開発機構地球環境観測研究センター | 研究員 |
4 |
江口景子 | 名古屋大学大学院環境学研究科 | 大学院生 |
5 |
藤吉康志 | 北大低温研 | 教授 |
研究目的 | 本共同研究では、大気境界層や雲層における雨滴と水蒸気の交換過程を調べるために、水の酸素・水素安定同位体組成に着目し、それらの挙動を定量評価することを目的とした。従来、降水が液相の降雨である場合、雲底下で落下した雨滴が大気境界層内でどのように水蒸気と交換し、その同位体組成を変化させているのかについて定量評価した研究がほとんど無かった。そのため、特に、雨滴を粒径別に採取し、その酸素・水素安定同位体組成を分析することで、雲底下や大気境界層内における雨滴と水蒸気の交換過程を理論的かつ実験的に定量評価することを目的とした。 |
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研究内容・成果 | 本共同研究では、微量水試料の分析手法の確立、粒径別の雨滴採取方法の確立と同位体組成変化の定量評価、観測とそのデータ解析、雨滴と大気水蒸気間の同位体交換モデルの開発あるいは応用、という順に研究を行った。 先ず、雨滴を液体窒素によって凍結させ、粒径別に回収する方法を確立した。また、数滴での酸素・水素安定同位体組成の分析が可能な実験系を確立した。特に、粒径別に雨滴の同位体分析を行う必要があったため、μLレベルで採取した水試料の同位体組成を分析する手法開発を行った。その後、3回の降水イベントにおいて雨滴を粒径別に回収し、それらの同位体組成を決定した。得られた結果を従来の研究で開発された鉛直一次元モデルや本共同研究の枠組みで独自に開発した0次元モデルで定量評価した結果、すべての粒径の雨滴において、落下中に質量と同位体組成が変化したことが示された。特に、小雨滴ほど雲底下における同位体組成の変化が大きいことを示したのに加えて、小雨滴の多くが大雨滴から分裂したことを示唆した。落下中の雨滴と大気との水蒸気交換に関して、同位体組成を指標に観測した研究例がほとんど無いことから、本研究と研究結果は、世界初のものである。 本共同研究では、以上の研究に加えて、大気境界層と雲層(あるいは自由大気)内の水蒸気、雲粒、雲氷、雨滴を採取し、数kmスケールでの水循環過程を総括的に調べるための航空機観測のデザインや、関連する装置開発の展望についての研究打ち合わせも併せて行った。 |
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成果となる論文・学会発表等 |
檜山哲哉・阿部理・栗田直幸・藤田耕史・池田健一・橋本重将・辻村真貴・山中勤:水の酸素・水素安定同位体を用いた地球水循環研究と今後の展望.水文・水資源学会誌,21(2),158-176,2008. |