共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

火災による永久凍土の変動に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 宮城大学食産業学部
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 原田鉱一郎

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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串田圭司 北大低温研 助教

研究目的 近年、北極域では森林地帯やツンドラ地域において自然火災が多発している。火災は地表面の熱条件を変化させ、凍土の融解が進行することが予想される。また凍土の状態の変動は、地表面付近の水分保持状態が大きく変化するために、植生回復過程において重要な役目を果たす。そこで本研究では、様々な空間スケールにおける火災後の永久凍土の変動をモニタリングし、回復過程を含めた永久凍土への火災の影響を評価することを目的とする。スケールは、点作業(ピット掘削)、広域探査用の物理探査、さらに広域に調査域を広げるための衛星データの利用を行う。
  
研究内容・成果 火災後の永久凍土の変動をモニタリングするために、アラスカ内の2箇所で野外観測を実施した。まず、アラスカ中央部フェアバンクス近郊のポーカーフラットにおいては、2007年7月から8月にかけて現地調査を実施した。この地域は2004年に大規模な森林火災が発生しており、その後の凍土の状態のモニタリングを行った。ピット掘削による土壌プロファイル断面観測より、表面付近のコケ層は火災によって消失しており、そのために地温の上昇、活動層(夏季融解層)の厚さの増加が観測された。また、土壌は非常に乾燥していることが明らかになった。更に、ALOS搭載のセンサであるAVNIR-2を利用し、林床のミズゴケの燃焼割合の評価を行った。現場調査の結果と合わせたところ、AVNIR-2の赤バンドと緑バンドの差と和の比より、50m×50m以上のスケールの林床燃焼割合の推定が可能であった。
もう一つの調査地であるアラスカ西部に位置するスワード半島内のクーガルック地域は、1971年、1997年、2002年にツンドラ火災が発生している。直近の2002年の火災の影響を調べるために、2007年8月に現地調査を行った。ここではポーカーフラットと同様の地温上昇・凍土の融解が確認されると共に、直流電気探査法を用いた探査より、地下の土壌水分が均質化されていることが推定された。更に、本調査地ではALOS搭載のセンサである合成開口レーダ・PALSARを利用し、地表面の租度の検出の試みを開始した。この租度は、火災によって表面のコケ類が消失し、それによってタソックと呼ばれる高さ20cmほどの植生が目立つようになり、結果として租度が高くなる可能性がある。このタソックが存在することにより、地表面付近で冬季に対流が発生し、コケ類で表面が覆われている場合と比較して低温になる可能性がアラスカ内の他の観測から示唆されている。このため、衛星データによって広域にわたって租度を検出することができれば、地表面温度の推定も可能になると考えられる。更に、AMSR-Eなどの他の衛星データの利用によって、地表面付近の土壌水分量の推定の可能性も示されており、今後も継続して研究を進めることにより、永久凍土の状態のモニタリングにおける衛星利用の有効性を高めることになると期待される。
  
成果となる論文・学会発表等 原田鉱一郎、澤田結基他.アラスカ・永久凍土地帯における活動層の水分状態の推定.東北の雪と生活、22、63-66、2007.
K. Harada, Y. Sawada, et al. Impacts of tundra fire on active layer condition and estimation of true resistivity value of soil in Seward Peninsula, Alaska. Fall Meeting, American Geophysical Union, 2007.