共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
寒冷圏向け降水量計の開発 |
新規・継続の別 | 継続(平成16年度から) |
研究代表者/所属 | 海洋研究開発機構 |
研究代表者/職名 | サブリーダー |
研究代表者/氏名 | 矢吹裕伯 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
|
所 属
|
職 名
|
|
1 |
飯島慈裕 | 海洋研究開発機構 | 研究員 |
2 |
兒玉裕二 | 北大低温研 |
研究目的 | 寒冷圏における気象観測においては、様々な問題が存在する。中でも降水量と湿度の精度に関しては現在の測定機器のマイナスの温度での測定に限界があることが知られている。中でも降水量は水循環の中で最も重要な要因でありそれが強風域にあたる局地では十分精度良く測定されていないのは良く知られていることである。この原因は主として強風下では降水量計が降雪を正確に測定できないことによる。また湿度に関しては現在一般的に使われるものが静電容量式の湿度計であり、このセンサーに関してはマイナスの温度での湿度の測定に関して正確に測定できないということが報告されている。本研究ではこれらの測定機器に関して検証を行った。 |
|
|
研究内容・成果 | 観測期間中の相対湿度と気温の30分値の時系列の関係より、気温は両者の変化がほぼ一致しており、測器間の器差はほとんど認められない。測器間の器差は頻度の中心が+0.1℃にあるほぼ対称な分布を示しており、94%が±0.5℃以下の範囲内にある。一方、相対湿度は、観測期間を通じて通風乾湿計のほうが露点温度計よりも高くなっている。測器間の器差の頻度分布は+4%を中心としており、+10%を超える器差の頻度も全体の5%に達する(。時系列図からもわかるように、相対湿度の器差は高湿度状態で大きくなことが明らかになった。特にマイナス10度以下の気温を保った1月8日から19日にかけての湿度が80%以上の状態が持続した。その間、通風乾湿計の相対湿度は95%以上で一定の観測値を示したのに対して、露点温度計の相対湿度は日中の低下が現われており、反応が異なる様子が観測された。この期間は降雪が断続的に続いており、通風乾湿計では、常時稼動している通風ファンによる空気の取り込みに際して、雪がセンサー内部に取り込まれて高湿度状態になる測定上の問題が表れていると考えられる。それに対して、露点温度計は10分に1回、間欠的にファンが稼動するため、雪を取り込みにくくしているのに加えて、測定ごとに鏡面のクリーニングを行なう設定で測定をしていたため、降雪が続く条件でも、湿度変動の応答が捉えられたと考えられる。測定機器のこれまでの使用経験での状況としてシベリア・ヤクーツクがあるが、そこでの冬季の測器の状況からも、通風ファンの常時稼動によって雪や霜が通風筒内部にたまり、湿度出力が高湿度状態で変化しない測定上の問題が明らかになっている。冬季の相対湿度は地上積雪ならびに樹冠着雪からの昇華量などの冬季の熱収支過程に重要な測定要素であるため、今回明らかになった通風乾湿計の問題点について更に野外試験・実験観測を併用した検討を行なう必要がある。 |
|
|
成果となる論文・学会発表等 |