共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

 気象の時間変動と道路構造別冬期路面状態の予測に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者／所属 （独）土木研究所寒地土木研究所
研究代表者／職名 上席研究員
研究代表者／氏名 浅野基樹

研究分担者／氏名／所属／職名
　
氏　　名
所　　属
職　　名

1

 高橋尚人 （独）土木研究所寒地土木研究所 総括主任研究員

2

 徳永ロベルト （独）土木研究所寒地土木研究所 研究員

3

 舟橋誠 （独）土木研究所寒地土木研究所 研究員

4

 石川信敬 北大低温研 助教授

研究目的 路面凍結予測に基づいて事前に凍結路面対策を講じる「雪氷路面の戦略的管理」を目指し、熱収支モデルを用いた路面凍結予測手法の構築について研究を進めており、走行車両の影響を考慮した熱収支法による路面温度推定の基礎モデルを構築したところである。当該モデルを用いた路面温度推定を行ったところ、実測より低く路温を推計し、特に夜間の誤差が大くなった。沿道構造物からの長波放射を考慮していないことが原因と考えられたため、当該モデルの大気放射項に遮蔽率と沿道構造物等からの長波放射の補正を取り入れ、更に、長短波放射収支計を設置して下向き長波放射量を観測した。
図1　路面での熱収支概念図　図2　長波放射量観測地と推定値　図3　路面温度観測地と推定値（国道5号札幌市西区・2005年12月1日〜10日）
研究内容・成果 I．概要
（1）路面温度推定基礎モデルの概要
路面温度（Ts）は路面に入力される熱、路面から放出される熱の差し引きで決定され、また、走行車両による大気放射の遮蔽、車体からの赤外放射などの影響が考えられる（図1参照）。走行する車両の影響を考慮した路面での熱収支は式(1)及び式(2)で表すことができる。

R↓＝σTs4＋H＋lE＋G　　 (1)

R↓：路面への入力エネルギー [W/m2]
σ：ステファン-ボルツマン係数（5.67×10-8W/m2K4）
Ts：路面温度[K]
H：顕熱伝達熱量 [W/m2]
lE：潜熱伝達熱量　[W/m2]
G：地中伝達熱量　[W/m2]

R↓＝Sr↓-Sr↑＋Lr↓＋Lc　　　　　(2)

Sr↓：路面が受ける正味の日射量 [W/m2]
Sr↑：路面での反射量 [W/m2]
Lr↓：路面が受ける正味の大気放射量 [W/m2]
Lc ：自動車の車体からの赤外放射量 [W/m2]

（2）大気放射項の補正
式(2)の大気放射量の項に沿道構造物等による遮蔽（φ）と沿道構造物等からの長波放射（Lstrc↓）を考慮して、大気放射量の項を式(3)のように設定した。

Lo↓＝(1-φ)Lr↓＋φLstrc↓　　(3)

φ：遮蔽率（沿道構造物等により天空が覆われている割合）
Lstrc↓：沿道構造物等からの長波放射量[W/m2]

（3）大気放射量等の観測
式(3)の遮蔽率を求めるため、魚眼レンズを用いて上空の写真撮影を
行った。また、現地観測地点に長短波放射計を設置し、長波
放射量を観測した。

II．結果
（1）長波放射量の観測・推定結果
図2に長波放射量の観測結果と、式(3)を用いた推定結果を示す。
誤差RMSEは、モデル改良前には39.5W/m2だったが、式(3)を用いたところ17.8W/m2に向上した。

（2）路面温度推定モデルの精度検証
図3に、一般国道5号札幌市西区発寒小樽方向車線(KP273.7R)における2005年12月1日から10日までの路面温度の観測値と沿道構造物等の影響を考慮した路面温度推定モデルを用いた推定値を示す。
また、当該地点におけるモデル改良前後の精度検証時のRMSEは、全日平均で1.5℃、昼間（6時〜17時）平均で1.4℃、夜間（18時〜翌朝5時）平均で1.7℃向上した。

III．まとめと今後の課題
沿道構造物等による遮蔽及び沿道構造物等からの長波放射を考慮することで、路面温度推定精度を向上させることができた。沿道構造物や高架橋の多い市街地などで路面温度推定を行う場合、遮蔽率による大気放射量の補正は有効かつ必要な手法と考えられる。今後は、別途構築を試みている橋梁部の路面温度推定モデルの精度を向上させるとともに、道路という延長を持った「線」への展開、気象予測と連動した路面凍結予測手法へと発展させていく予定である。
図1　路面での熱収支概念図　図2　長波放射量観測地と推定値　図3　路面温度観測地と推定値（国道5号札幌市西区・2005年12月1日〜10日）
成果となる論文・学会発表等 高橋尚人、徳永ロベルト、浅野基樹、石川信敬、川上俊一：冬期路面管理支援システム構築に関する実践的研究、第33回土木計画学研究発表会、CD-ROM、2006

高橋尚人、徳永ロベルト、浅野基樹、石川信敬、川上俊一：路面凍結予測に基づくプロアクティブな冬期路面管理手法構築に関する研究、北海道の雪氷　第25号、pp5-8、(社)　日本雪氷学会北海道支部、2006年10月

高橋尚人、浅野基樹、石川信敬：沿道構造物の影響を考慮した路面温度推定モデルの構築について、第22回寒地技術シンポジウム、寒地技術論文・報告集vol.22　pp153-158、平成18年11月

Takahashi， Naoto， Roberto A. Tokunaga， Motoki Asano， and Nobuyoshi Ishikawa: Modeling to Predict Bridge-Pavement Temperature for Winter Maintenance Decision， TRB 86th Annual Meeting， CD-Rom paper number 07-1312， 2007