共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

 高緯度地域の雲とエアロゾルの光学的特性の経年変動
新規・継続の別 継続（平成14年度から）
研究代表者／所属 富山大学大学院理工学研究部
研究代表者／職名 助教授
研究代表者／氏名 青木一真

研究分担者／氏名／所属／職名
　
氏　　名
所　　属
職　　名

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 藤吉康志 北大低温研

研究目的 IPCCの第4次評価報告書は、前回の報告書で科学的に理解されていなかったエアロゾルや雲の気候影響が、ようやく定量的に示されてきた。しかし、その値も不確定であり、以前としてわからないことが多いとされた。これは、エアロゾルの特徴が時間的・空間的変動が大きく、様々な物質で構成されているためである。とりわけ、高緯度地域の雲とエアロゾルの光学的特性の観測・研究は少なく、1997年から札幌において連続観測を行っていることは、貴重なデータの蓄積となっている。我々は、札幌での太陽放射観測により、高緯度地域のエアロゾルの光学的特性について、自然起原や人為起原のエアロゾルの時間・空間的変動の把握を目的としている。
Fig. 1　2006年1月から12月までの札幌におけるのエアロゾルの光学的特性　　
研究内容・成果 高緯度地域の自然起原や人為起原のエアロゾルと雲の時間・空間的変動の把握を目的として、1997年より北海道大学低温科学研究所屋上にて、太陽の直逹光と周辺光の角度別分布（最大散乱角24個）を7波長（315， 400， 500， 675， 870， 940， 1020 nm）を自動測定できるSkyradiometer（Prede. Co.， Ltd.）を使って、連続観測を行ってきた。太陽放射輝度と周辺光の角度分布の測定は、晴天時の日中に10分おき1回、測定を行い、得られたデータからSKYRAD.pack Ver.4.2. (Nakajima et. al， 1996)を使用し、エアロゾルの光学的厚さや粒径の指標となるオングストローム指数、一次散乱アルベド、体積粒径分布などの計算を行っている。冬期間の札幌は、地表面が雪に覆われるため、計算に使用する地表面アルベドを冬期間は変更して解析を行っている。計算手法は、散乱角30度まで使用して、測定波長ごとのエアロゾルの光学的厚さを算出している。つぎに、これらの結果を利用して、改良型ラングレー法により、大気上端の太陽放射の輝度値を求め、観測した最大散乱角までを使用して、エアロゾルの光学的厚さや一次散乱アルベド等の再計算を行っている。
添付のFig. 1は、2006年1月から12月までの札幌における0.5 ?mのエアロゾルの光学的厚さの月平均値（上図）、オングストローム指数の月平均値（中図）、0.5 ?mの一次散乱アルベドの月平均値（下図）を示したものである。札幌のエアロゾルの光学的特性の季節変化は、観測初期の測定結果（Aoki and Fujiyoshi，2003）と同様に、エアロゾルの光学的厚さは、春に高く、秋に低い傾向を示している。昨年の報告（2005年6月の結果）と同様に、2006年6月の光学的厚さが、最大値となった。これは、雲や雨などの影響により、それらの影響を受けている可能性があるが、まだ、はっきりした結論に至っていないため、今後の雲除去法のアルゴリズムやそれらの物理特性と導出方法が課題である。エアロゾルの粒子の大小の指標として見るのに便利なオングストローム指数の季節変化は、あまりはっきりした季節変化が見られなかった。しかしながら、春や秋のエアロゾルオングストローム指数が低い傾向にあり、大陸から輸送される黄砂粒子の影響を示していると示唆される。ただし、黄砂粒子と伴って、人為起源のエアロゾルの大陸からの輸送も考えられ、オングストローム指数が低くならない傾向にあると考えられる。一次散乱アルベドの季節変化もはっきりとした傾向が見られないが、夏に低い、吸収の効果が確認され、春と秋に高い散乱の効果が見られた。今後、同時観測しているLidar観測やその他の測器との比較を行い、さらに詳細な雲とエアロゾルの光学的特性を示していきたいと考え、今後も、本観測研究を継続することで、過去のデータとの比較、および高緯度地域の経年変化をモニタリングすることが出来る重要なデータとなると考える。
Fig. 1　2006年1月から12月までの札幌におけるのエアロゾルの光学的特性　　
成果となる論文・学会発表等 Aoki， K.， (2006) Aerosol optical characteristics in Asia from measurements of SKYNET sky radiometers. in IRS 2004: Current Problems in Atmospheric Radiation， H. Fischer and B-J. Sohn， Eds.， A. Deepak Publishing， 311-313.

Arao， K.， J. Ishizaka， N. Sugimoto， I. Matsui， A. Shimizu， I. Mori， M. Nishikawa， K. Aoki， A. Uchiyama， A. Yamazaki， H. Togawa and J. Asano (2006)， Yellow Sand Dust Event on 13 April 2003 over Western Kyushu， Japan， SOLA， 2， 100-103.