共同研究報告書
研究区分 | 研究集会 |
研究課題 |
雪氷の生態学ーアカシボ,アカユキの成因と生物群集 |
研究代表者/所属 | 新潟大学教育人間科学部 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 福原晴夫 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
大高明史 | 弘前大学教育学部 | 教授 |
2 |
落合正宏 | 徳島文理大学工学部 | 教授 |
3 |
山本鎔子 | 元明治大学農学部 | 元明治大学教授 |
4 |
竹内望 | 総合地球環境学研究所 | 助手 |
5 |
野原精一 | 国立環境研究所生物圏環境部 | 室長 |
6 |
幸島司郎 | 東京工業大学大学院生命理工学研究科 | 助教授 |
7 |
菊地義昭 | 茨城大学広域水圏科学教育研究センタ- | 教授 |
8 |
福井学 | 北海大学低温科学研究所 | 教授 |
9 |
小島久弥 | 大学低温科学研究所 | 助手 |
研究集会開催期間 | 平成 17 年 10 月 27 日 〜 平成 18 年 10 月 28 日 |
研究目的 | 融雪期に雪氷面が赤,黄,時に黒く着色する現象(一般にアカユキ)は古くから世界の積雪地域から知られ,本邦においても,山岳地帯を中心に報告されてきた.我々の研究対象である尾瀬ケ原・尾瀬沼においてもアカシボ現象として知られてきた大規模なアカユキについて,これまで知られていない藻類や細菌,ミミズ類,ユスリカ幼虫など多様な生物群集を含み,複雑な系をなすことを明らかにしてきた。同様なアカユキ現象を示し,クリオコナイト・ホールなどで明らかにされてきた氷河の生物群集とアカシボを比較,検討し,その成因と構成生物群集について一般性と特殊性を明らかにすることを目的として報告・討論会を行なった. |
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研究内容・成果 | 本研究集会は,尾瀬ヶ原におけるアカシボ現象の研究グループと氷河生態系研究者との「アカユキ」現象をめぐる討論集会として,低温科学研究所において開催された.本集会では,アカシボと氷河生態系の生物群集の比較,低温環境下における微生物群集構成やそれらの解析法の比較,低温環境下での生物群集の成立と今後の課題についての視点を中心に報告・討論を行なった。 報告のテーマは以下のようであった.氷河上の雪氷藻類とその雪氷融解の促進効果(竹内 望,総合地環研),氷河生態系のバクテリア解析(瀬川高弘,極地研),尾瀬におけるアカシボの分布と発生メカニズム(野原精一,国立環境研),アカシボの化学成分(落合 正宏,徳島文理大),アカシボの藻類(林 卓志ヤマハ発動機,山本鎔子 元明治大学),アカシボ構成微生物への分子生態学的アプローチ(小島久弥・福井 学,北大低温研),メタゲノム解析と情報学的手法を駆使したアカシボの微生物相の解明(阿部貴志・田中尚人,遺伝研),アカシボにおける無脊椎動物の分布(福原晴夫,新潟大教育人間),アカシボの貧毛類の特徴(大高明史,弘前大教育),尾瀬ヶ原におけるアカシボと池溏のソコミジンコの比較(菊地義昭,茨城大広域水圏科学教育研究セ). 尾瀬ヶ原におけるアカシボ現象では,発生部位として泥炭湿地上で融雪期に融雪水が滞留・流動する地形に特徴があり,化学的成分から単なる土壌成分の雪中の移動ではないこと,赤くなる原因として鉄酸化物を細胞に付着した,緑藻類の一種であるHemitoma sp.の存在が,これまで氷河や山岳地帯等で報告されてきた原因藻類であるChlamydomonasと基本的に異なっており,これまでのアカユキとは極めて異なる現象であることが明らかとなった.一方では,氷河生態系と比較することにより,低温環境下での群集構成,特に藻類と細菌類におけるアカシボを含めたアジア地域の共通性と地域的特徴が明らかとなった.また後世動物においてもアカシボと氷河生物,特にソコミジンコ類,水生貧毛類における類似性が明らかにされ,新たな視点を得ることが出来た.一般的な分子生態学的手法での解析では,アカシボ微生物群集の主要なメンバーは氷河等の他の低温環境と共通することが示された。一方で微生物群集解析の新しい手法である,情報学的手法を組み合わせたメタゲノム解析ではこれとはやや異なる結果が得られた.今後,これらの手法について更なる比較検討を行うことでアカシボ微生物群集構造をより正確に捉えることができるものと期待される。 討論を通じて,これらの生物群集の温暖化への反応,紫外線の増加に対する適応,低温環境への適応などが将来の課題としてあげられることが明らかとなった. |
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成果となる論文・学会発表等 |