共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

寒冷圏向け降水量計の開発
研究代表者/所属 海洋研究開発機構
研究代表者/職名 サブリーダー
研究代表者/氏名 矢吹裕伯

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

門田勤 海洋研究開発機構 サブリーダー

2

大畑哲夫 海洋研究開発機構 ダイレクター

3

兒玉裕二 北大低温研

研究目的 降水量は水循環の中で最も重要な要因でありそれが強風域にあたる局地では十分精度良く測定されていないのは良く知られていることである。本研究では実用性かつ降水量の正確な把握を目的とすることから、新たな形状をもつ雨量計を作成するよりも捕捉率が既知である形状(トレチャコフ式)の雨量計を作成し、その雨量計の検証を行うものである。
北海道大学雨龍演習林母子里に設置した新降水量計  
研究内容・成果 トレチャコフ雨量計は、WMO(世界気象機関)が固体降水量に関して測器の比較観測を行う場合の準器として推奨しているDFIR(Double Fence Intercomparison Reference),二重柵基準降水量計の感雨部で使用されるロシアの標準雨量計である。このトレチャコフ雨量計の形状を持つ雨量計はGoodison et al.,(1998)らにより風速による固体降水の捕捉率が求められている。
本研究で作成した降水量計は受水口径200cm2のWMO標準の口径をもちその雨量カウント部分は日本の積雪地域のAMEDAS地点で用いられるRT-4型のいっすい型で受水部分に入った降雪を融解し増加した水を計測部分である転倒升に排水する形式である、さらに降水量の測定精度は0.1mmであり、日本で用いられる一般の降水量計の精度0.5mmより高性能のものである。さらにトレチャコフ降水量計の風よけを持ちWMOによりより風速に対しての捕捉率が求められているタイプである。使用する対象地域はシベリア地域であり、極低温環境(-40℃程度)での計測が必要となる。
結果
1.極低温環境下での雨量カウント部分の駆動検証:
検証は低温科学研究所の低温室で行った。その結果、-30℃以下の環境下では雨量計下部の転倒升から排水した水の外部の排出する部分で凍結が起こり、計測部分である転倒升が凍結し計測できないことがわかった。
2. 野外での雨量計の検証
実際の検証は2005年12月より北海道大学雨龍演習林母子里で行った(図1)。母子里では現在気象観測が行われており冬季の降水量に関して詳細なデータが取得されている。母子里では通常積雪が2mを超える積雪があり、今回作成した降水量計の使用対象地域のシベリアとは大きく異なるが、詳細な気象観測を行っている観測地域は少ないので、母子里での実験を行った。今回作成した降水量計の形状はトレチャコフ降水量計とまったく同じであり、風の抵抗を少なくするための風よけが設けられてある。この風よけ口径は直径1mであり、上部の高さは受水容器と同じであるが、風除けの下部の口径は約25cm程度でありちょうど開ききったチューリップの花の形状をしている。積雪初期において日降雪量が多くなる時期において風除けの部分の多量の積雪が起こり、風除けが壊れてしまう結果となった。また同時期において、積雪が降水量としてカウントされない結果になった。この原因は詳しい結果はわからないが、低温環境下での排水部分での凍結が原因の一つと考えられる。
まとめ
今回の研究において極低温環境下では排水部分での凍結により転倒升部分の凍結が起こることがわかった。これは今後のヒーターをつける、排水部分の口径を大きくするなどの改良が必要であり。またトレチャコフ降水量計は冬期の積雪が多くないロシアで開発されたものであり、積雪が多い日本で用いるには風除けに問題があることがわかった。
北海道大学雨龍演習林母子里に設置した新降水量計  
成果となる論文・学会発表等