共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
氷微惑星の衝突破壊強度に対する空隙率・焼結度依存性 |
研究代表者/所属 | 名古屋大学大学院環境学研究科 |
研究代表者/職名 | 助教授 |
研究代表者/氏名 | 渡邊誠一郎 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
城野信一 | 名古屋大学大学院環境学研究科 | 助手 |
2 |
山本哲生 | 北大低温研 | 教授 |
3 |
荒川政彦 | 名古屋大学大学院環境学研究科 | 助教授 |
研究目的 | 原始太陽系星雲で生まれた氷微惑星の生き残りとして,彗星核やカイパーベルト天体などが候補としてあげられている.Wild2彗星はその表面の鮮明な画像が得られており,クレーター地形の解析から重要な発見がなされた.観測された2種類のクレーターは,いずれもある程度の力学強度を持つ表面にしか現れないクレーターである.彗星核は高い空隙率を持つと予想されるが,それだけでなく上述したように焼結していた可能性が高い.従って,氷微惑星の衝突現象を研究する上で,空隙率とともに焼結度が重要なパラメーターとなる.そこで,クレータースケール則に対する空隙率と焼結度の依存性を調べる実験を開始したので,以下に報告する. |
研究内容・成果 | 実験方法:クレーター形成実験は,雪試料を用いて行った.試料は直径13.5cm,高さ10cmのステンレス容器に氷粉末(<500ミクロン)を詰めて準備した.実験は-5,-10,-18度で行った.試料の空隙率は,35〜45%であり,標準の焼結時間は15分である.-10度の実験では,焼結時間を3分から60時間と変化させて焼結度の影響を調べた.衝突実験は,氷と雪の弾丸を用いて行った.弾丸サイズは7mmで,雪弾丸の空隙率は30〜35%である.弾丸はヘリウムガス銃を用いて3〜150m/sに加速した.衝突時の様子は高速度ビデオカメラで撮影し,弾丸速度やイジェクタ形状・速度を計測した.実験後,クレーターの質量減少量や直径,深さ等を計測した. 実験結果と考察:焼結時間が15分(一定)である場合,-10度では速度増加とともにクレーターサイズが大きくなるのが確認できる.速度が遅い場合,弾丸である雪は破壊されずに付着して残存するが,速度増加とともに弾丸は粉々に破壊し,その痕跡のみが氷微粒の環状構造として確認できる.温度が低くなると速度が同じでも,クレーターサイズは極端に大きくなる.これは低温のため雪の焼結が進まず,強度による抑制を受けなかったからだと考えられる.また,弾丸が氷の場合,破壊することなくクレーター中心部分に深く潜り込み,実験後に元のまま回収される.温度が高い場合,今度は焼結が進むのでクレーターサイズは小さくなる.クレーター体積と弾丸の運動エネルギーの関係は,各温度,弾丸種類毎にべき乗の実験式でフィットでき,そのべき指数は条件に関係なくほぼ0.5と一定である(図1).相関関係は温度が低くなるほど上方に移動し,弾丸が氷と雪の場合では氷の方が,系統的にクレーター体積が大きくなる.今回の実験条件では,-5度と-18度で3倍程度のクレーター体積の差が生じた. |
成果となる論文・学会発表等 | Arakawa, M., Sinterng of snow and its effect on the crater formation, Proc. 38th ISAS Lunar and Planetary Symp., in press. 荒川政彦「高速度衝突による雪の衝撃融解」2005年度日本惑星科学会秋季講演会 2005年9月(会津大学) 荒川政彦「雪の焼結とそのクレーター形成への影響」第38回月・惑星シンポジウム 2005年7月(宇宙科学研究本部) 荒川政彦「雪面上の衝突クレーター形成に対する焼結の効果」2005年度日本雪氷学会全国大会 2005年9月(旭川) |