共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

自然冷気による貯水タンクの製氷過程の実験
研究代表者/所属 北海道大学大学院農学研究科
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 浦野慎一

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

木村賢人 北大農学研究科 博士後期課程2年

2

石井吉之 北大低温研 助手

研究目的  自然エネルギー利用の技術開発を行うため、本学農学部では、冬期の自然冷気を使って水を凍結させ、それを夏期に融解させて、その凍結・融解の潜熱を利用して1年中0℃近辺の低温環境を創出するアイスシェルターシステムの開発を行っている。
 アイスシェルターは、自然冷気を使って製氷を行うため、冬期に貯氷タンク内の水を効率良く凍結させて製氷を行うことが技術的なポイントになる。 本研究は、大きさと形が異なる貯氷タンクを使って製氷実験を行い、タンク内の水が凍結するプロセスを実験によって明らかにし、効率よく製氷ができる貯氷タンクの大きさ、形を検討することを目的とした。
  
研究内容・成果  低温科学研究所の環境制御実験室において、容量約210リッターのスチール製タンクと約25リッターのプラスチック製タンクを使って製氷実験を行った。環境制御実験室はon-off制御により室内温度が-12℃から-5℃の低温に保たれており、その状態でタンク内の水を凍結させてそのプロセスを観測した。観測はタンク内の温度変化をT型熱電対により1分間隔で測定し、それをデータロガーに記録して行った。この実験を2回行い、スチールタンクとプラスチックタンクの製氷プロセスの違い、凍結に要した日数、製氷効率等を比較した。
 その結果、スチールタンクは屋外実験と同様に上面から凍結が進み、最後に底面が凍ることがわかった。また水面付近では相変化による急激な温度変化が見られなかった。これは、水面付近の気温が影響したためと考えられた。またタンク内の水が全部凍るまでに要した積算寒度は、74℃dayで、この値は別に行った屋外実験における値(55℃day)より大きかった。一方プラスチックタンクは、最初は上面から凍結するが、途中から底面と側面からも凍結が生じ、最後に中央が凍ることがわかった。また、両者の製氷効率(積算寒度に対する凍結量)を比較した結果、スチールタンクとプラスチックタンクの製氷効率はそれぞれ、0.26℃daykg-1、0.35℃daykg-1(屋外では0.35℃daykg-1)で、スチールタンクの方が高かった。プラスチックタンクの製氷効率が悪かったのは、熱伝導率が小さいことのほかに、容量が小さく、また水面が露出している表面積が小さいためと考えられた。しかし、プラスチックタンクは製氷効率は悪かったが、スチールタンクより短期間でタンク内の水を凍結させることができた。なお、スチールタンクで屋外の製氷効率が高かったのは、屋外では風による熱交換効率の向上があったためと考えられた。
 以上の結果から、ある程度積算寒度が大きい地域では、熱伝導率が大きくて大量の水を効率よく凍結させるスチールタンクが有利であるが、積算寒度が小さい地域では、少量の水を短期間で凍結させるプラスチックタンクが有効であることがわかった。
  
成果となる論文・学会発表等