共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

低温場中での走化性因子ケモカインの濃度勾配による好中球運動の観察と解析
研究代表者/所属 九州工業大学 大学院生命体工学研究科
研究代表者/職名 助教授
研究代表者/氏名 玉川雅章

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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古川義純 北大低温研

研究目的 研究目的 生体内での免疫反応機構でみられる好中球(白血球)運動の走化性サイトカインの濃度勾配や周囲場の温度勾配による影響を調べ,その物理的な運動機構を明らかにし,生体内の薬物搬送システム(ドラッグデリバリーシステム)への応用に対する基礎的な検討を行う.本研究では,マッハツエンダー干渉計を用い,濃度勾配や温度勾配の定量的な測定下における好中球の運動の可視化観察を共同で行う.
  
研究内容・成果 本年度は,研究目的に対しマッハツエンダー干渉計の装置内での観察部の作成と濃度勾配の測定,微小重力下での実験を行った.それぞれについて,以下の結果を得た.

(1)好中球の移動のための走化性因子サイトカインIL-8の濃度範囲の計測
好中球の移動のために必要なサイトカインIL-8濃度は,倒立顕微鏡を用いた2次元の観察実験により1ng/ml〜1000ng/mlであり,100ng/mlのときに移動速度のピークを持つことがわかった.これにより,これにより,干渉計の観察部で用いる濃度範囲を決定することができた.また,濃度の輸送方程式(拡散方程式)を用いた数値計算との比較により,サイトカインの濃度勾配に対する位相速度のプロットが得られ,白血球膜の界面張力の濃度依存性が示された.


(2) 微小重力下でのマッハツエンダー干渉計を用いた干渉縞および明視野の同時観察

航空機を用いた微小重力の実験を行うことにより,サイトカインの濃度勾配の影響のみによる好中球の移動を計測した.少量の好中球を新鮮な血液より分離し,温度一定(24度)の元で各種のサイトカインの濃度勾配に対する好中球の運動を微小重力下で観察を試みた.

干渉縞の観察のため,北大低温研所有のマッハツエンダー干渉計の観察部を作成した.2 x 100 x 20 (mm)のセルに蒸留水液を満たし,セルの上部からピペットにて,サイトカインを1ng/mlから1000ng/mlの濃度で10μ滴下したが,結果として,サイトカイン濃度が好中球の運動に必要な濃度の100〜1000倍程度高い濃度が干渉縞の観察には必要なことがわかった.

今後はサイトカインの濃度勾配の実測を行うため,マッハツエンダー干渉計の方法の改良のみならず,濃度勾配計測の方法として蛍光粒子を用いる方法を行う予定である.


  
成果となる論文・学会発表等 EFFECTS OF GRADIENT OF CYTOKINE CONCENTRATION ON CHEMOTAXIS OF NEUTROPHILE WHITE BLOOD CELLS, M. Tamagawa, K. Mukai, Y. Furukawa, Proc. of Particulate Process in the Pharmaceutical Industry, Montreal, CANADA, 2005.6

サイトカイン濃度勾配による白血球の水中運動の観察,原田聖士,玉川雅章,向井楠宏,古川義純,山野井一郎, 第18回バイオエンジニアリング講演会講演論文集,135-136, 2006.1