共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

氷核活性細菌による水-油-空気-複合分散系中の氷晶の不均一核形成の制御
研究代表者/所属 広島大学大学院生物圏科学研究科
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 佐藤清隆

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

鈴木敦 広島大学大学院生物圏 博士課程前期1年

2

上野聡 広島大学大学院生物圏 助教授

3

古川義純 北大低温研

4

片桐千仞 北大低温研

研究目的  エマルションや、その中に気泡を抱き込んだホイップクリームは、液-液界面や気-液表面で隔てられた多相により形成された複合分散系という状態で規定される。本研究では,植物油を用いたW/Oエマルションとホイップクリームに分散した水中に,氷核活性細菌を添加して,エマルション化によって抑制された氷の核形成速度を上昇させるとともに,氷の形態を制御してエマルションの安定性を向上させるための基礎研究を行う。
 北大低温研には,氷晶形成を観察するためのX線回折装置や光学顕微鏡装置があり,本研究の遂行のためには共同研究が必要である。
  
研究内容・成果 水(Water: W)-油(Oil: O)-空気 (Air; A)が複合的に分散した系の中の水滴を結晶化させて保存することは、細菌の繁殖を完全に抑制したり、冷凍食品への利用という観点から実用的に極めて有用である。本研究はW/Oエマルション中に水滴が分散しているが,その水滴内部では氷結晶の核形成が抑制され,通常の冷却速度による氷晶形成温度は-15から-20ーCまで低下する。また、いったん形成した氷晶同士が,温度揺らぎによって部分合一を起こして凝集し,氷の融解とともに水滴が凝集してW/Oエマルションの安定性が破壊される。したがって、複合分散系中の氷の結晶化現象(核形成温度と形態変化)の制御のために、氷核活性細菌を添加して,エマルション化によって抑制された氷晶形成温度を上昇させるとともに,氷の形態を制御してエマルションの安定性を向上させるための基礎研究を行った。平成17年度の共同研究によって、バルク状態とホイップ状態のいずれにおいても、氷核活性細菌の微量の添加(1ppm)によって氷晶形成温度が純水の-17ーCから-7ーCに上昇し、さらに1000ppmの添加によって-4ーCまで上昇することが判明した。これは、氷核活性細菌により氷晶の不均一核形成が誘起されたことを示す。さらに、ホイップクリームの場合には、バルクに比べて氷核活性細菌の濃度が増加すると、ホイップ性の低下が認められた。これは氷核活性細菌が、複合分散系の界面状態を変調することを示唆している。以上の結果を踏まえて、微視的な観察、特に光学顕微鏡による氷晶形成過程のその場観察を行うことによって、氷核活性細菌による油-水-気泡の-複合分散系中の氷晶の不均一核形成のメカニズムを解明することが期待できる。
  
成果となる論文・学会発表等 (1)鈴木敦、片桐千仞、古川義純,上野聡、佐藤清隆、高融点油脂結晶によるホイップクリームの氷晶核形成の制御、第35回結晶成長国内会議、2005年8月19日,広島大学
(2)鈴木敦、片桐千仞、古川義純,上野聡、佐藤清隆、氷核活性細菌と高融点油脂結晶によるホイップクリームの氷晶核形成の制御、日本農芸化学会2006年年会,2006年3月27日、京都女子大学