共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

火星凍土や氷衛星地殻を模擬した氷・岩石混合物質の動的・静的力学物性
研究代表者/所属 神戸大学大学院自然科学研究科
研究代表者/職名 助教授
研究代表者/氏名 中村昭子

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

瀬藤真人 神戸大学大学院自然科学研究科 修士過程1年

2

川口和剛 神戸大学大学院自然科学研究科 修士過程2年

3

平岡賢介 神戸大学大学院自然科学研究科 博士過程1年

4

山本哲生 北海道大学低温科学研究所 教授

5

荒川政彦 名古屋大学大学院環境学研究科 助教授

研究目的  氷・岩石混合物は、太陽系天体表面の構成物として火星以遠では普遍的に存在する。その衝突応答について明らかにすることは、太陽系の起源と進化について研究する上で、重要課題の一つとなっていまる。特に、最近の外惑星衛星の探査や地上観測により新しいデータが蓄積されつつあり、これらを解釈するための室内実験による基礎データの取得を行う。
 本研究では変形試験機による静的強度の測定を行い、データを収集することにより、氷に岩石粉が混合することによる物性の変化についての定式化を目指す。
  
研究内容・成果  氷岩石混合比を変化させた柱状試料を作成し、これらについて一軸圧縮試験と圧裂引張試験を行った。
 岩石としては、かんらん岩と蛇紋岩の細粒を用意し、蛇紋岩は粒子サイズが数ミクロンのものと数百ミクロンのものを用意した。他方、かんらん岩の方は粒子サイズが数百ミクロンのものを用意した。蛇紋岩の数百ミクロンの粒子を用いた試料とかんらん岩を用いた試料は、粒径の違い、岩石成分の違いの影響を調べるために用意したもので、岩石の混合比が50%の試料のみを作成した。
 一軸圧縮試験に用いた試料のサイズは、直径が32mm、高さが43〜48mmで、他方、圧裂引張試験試料は同じ直径で高さを20〜35mmとした。試験の結果、蛇紋岩の数ミクロンの粒子サイズを用いた試料の場合、岩石の混合比0、12.5、25、37.5、50%の試料の圧縮強度は、それぞれ5.2±0.9、7.0±0.8、7.6±0.3、6.7±0.9、8.5±0.5MPaであった。同様の試料の引張強度はそれぞれ、0.74±0.04、0.83±0.25、1.2±0.3、1.9±0.2、2.1±0.5MPaであり、岩石混合比の増加とともに大きくなった。圧裂引張試験の際、岩石混合比が増加すると塑性変形量が増える傾向にあった。一方、粒径の大きな蛇紋岩、かんらん岩を用いた岩石混合比50%の試料の圧縮強度は8.2±0.2、8.8±0.2MPaであった。引張強度については、粒径の大きな蛇紋岩を用いた試料では塑性変形の度合いが大きくて測定できなかったが、かんらん岩を用いた試料の引張強度は1.4±0.1MPaであった。
 このように、圧縮強度に関しては粒径、岩石の違いの影響がほとんど見られなかったが、引張強度ではその違いの影響がより顕著に見られることがわかった。
  
成果となる論文・学会発表等 Hiraoka, K., Arakawa, M., Setoh, M., and A. M. Nakamura, MEASUREMENT OF COMPRESSIVE AND TENSILE STRENGTH OF ICE-SILICATE MIXTURES, LPSC XXXVI, Abs. #1602, 2006