共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

昆虫の生存戦力分子機構
研究代表者/所属 佐賀大農学部
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 早川洋一

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

松本均 農業生物資源研 特別研究員

2

吉賀豊司 佐賀大農学部 助手

3

落合正則 北大低温研

研究目的 Growth-blocking peptide(GBP)は昆虫幼虫の発育を抑制する機能を指標に同定したペプチドであるが、それ以降の解析によって昆虫生体内で幾つもの重要な生理機能を担っていることが明らかになった。特に、昆虫の自然免疫に関わる生理機能は特に注目を集めつつある。にもかかわらず、ごく最近まで、その同族体は鱗翅目昆虫からのみしか見つかっていなかった。本研究では、特に、鱗翅目昆虫以外からGBPの同族ペプチドを同定し、精製、構造決定を目指した。
  
研究内容・成果 Growth-blocking peptide(GBP)同族ペプチドは、これまで約10種の鱗翅目昆虫から16種類報告されている。本研究では、まず、甲虫目に属するゴミムシダマシの同族ペプチドの単離を試みた。ノーザンブロットやウェスタンブロットの結果から、ゴミムシダマシには鱗翅目昆虫のGBPと構造的に類似のペプチドあるいはペプチド遺伝子は存在しないことが確認できていたので、生理機能的に相同なペプチドの単離を試みた。すなわち、血球活性化と細胞増殖活性を指標にゴミムシダマシGBP様ペプチドの精製を行った。その結果、アミノ酸24残基からなるペプチドの単離に成功した。さらに、双翅目昆虫のヒツジギンバエからも同様に機能的相同ぺプチドの単離を行い、これまで報告されている動物サイトカインの中でも最小と言える19残基のアミノ酸からなるGBP様ペプチドの構造を決定した。また、このペプチド配列を基に、ショウジョウバエとカのゲノムデーターベース上で類似構造遺伝子の検索を行った結果、ショウジョウバエで5種類、カで2種類の相同遺伝子の同定に成功した。こうして同定した新規GBP様ペプチドと鱗翅目昆虫GBPとの構造上での相同性は必ずしも高いものではなく、せいぜい20%程度である。しかしながら、これらのペプチド配列、さらに、cDNA構造には次のような類似点が存在することに気付いた。
1) 活性ペプチドは19-25残基のアミノ酸からなる。
2) cDNAのORFはアミノ酸110-220残基からなるGBP前駆体をコードする。
3) 活性ペプチド領域は前駆体のカルボキシル末端に位置する。
4) ペプチドには以下のコンセンサス配列が存在する。
“x6-8Cx2Gx2G(K/R)C(K/R)x0-4”
今回、以上の性質が明らかになった昆虫ペプチドは、恐らく、広く昆虫全般に存在するサイトカインと考えられる。
  
成果となる論文・学会発表等 Tsuzuki, S., Sekiguchi, S. and Hayakawa, Y. (2005) Regulation of growth-blocking peptide expression during embryogenesis of the cabbage armyworm. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1078-1084.

Nakamura, T., Takasugi, H, Aizawa, T., Yoshida, M., Mizuguchi, M., Mori, Y., Shinoda, H., Hayakawa, Y. and Kawano, K. (2005) Peptide mimics of epidermal growth factor (EGF) with antagonistic activity. J. Biotechnol., 116, 211-219

Tsuzuki,S., Sekiguchi, S, Kamimura, M., Kiuchi, M. and Hayakawa,Y. (2005) A cytokine secreted from the suboesophageal body is essential for morphogenesis of the insect head. Mech. Dev. 122, 189-197.

Ninomiya, Y., Tanaka, K. and Hayakawa, Y. (2006) Mechanisms of black and white stripe pattern formation in the cuticles of insect larvae. J. Insect Physiol., in press