共同研究報告書提出

共同研究報告書

研究区分	一般研究
研究課題	積雪及び大気変動がアルベドに与える影響に関する研究(2)
研究代表者／所属	気象研究所
研究代表者／職名	主任研究官
研究代表者／氏名	青木輝夫

研究分担者／氏名／所属／職名
	氏　　名	所　　属	職　　名
1	堀雅裕	宇宙航空研究開発機構	開発部員
2	兒玉裕二	北大低温研

研究目的	地球温暖化の影響は、ice-albedoフィードバックによって雪氷圏で顕著に現れるため、積雪アルベドは地球温暖化予測に重要な要素である。積雪アルベドは積雪粒径と不純物濃度の2つの積雪物理量と大気の変動に依存して変化する。雪氷圏における精度の高い将来予測のためには、これら積雪物理量や大気とアルベドの関係を精密に測定し、陸面過程のモデル化や衛星リモートセンシングによる検証を行う必要がある。そこで低温科学研究所の露場で放射・気象・エアロゾル・雪氷の連続観測と積雪断面観測による積雪物理量の測定を行い、これらの観測データから積雪物理量と大気変動が放射収支に及ぼす影響を明らかにする。

研究内容・成果	2005/2006年冬期は、自動気象観測装置による大気境界層観測、積雪内部温度、土壌水分・温度の観測を行った。また、積雪断面観測も週2回のペースで行い、積雪物理量を高頻度で取得した。期間の前半は寒冬で積雪内部温度は、接地層を除いてマイナスの状態が維持した。2月中旬からは気温が上昇し、雨が降ることもあったため、全層約0℃の日が続き現在（3月）に至っている。　2003/2004及び2004/2005の2冬期間の全天分光放射計による波長別のアルベド観測データから、積雪内部の積雪粒径及び、積雪不純物濃度の関する情報が波長別アルベドにどのように反映するかについて調べた。その結果、可視域では積雪の表面から深さ数cmまでの情報を多く含んでおり、1.0um以上の近赤外域では表面から2cm以内の情報を多く含んでいた。これは氷による光吸収の強さが波長によって異なるためである。一方、積雪不純物は積雪層0-2cmと積雪層0-10cmの積雪サンプルについて、波長別アルベドとの関係を調べたところ、どの波長域も積雪層0-2cmの情報をより多く含んでいた。総合的に見て、積雪アルベドモデルを構築する際は、積雪物理量とアルベドの関係はある程度波長域を分割して求める必要がある。　2003/2004冬期における、放射収支観測、大気エアロゾル観測、積雪断面観測結果から、大気エアロゾルが積雪中へ沈着することにより、どのようにアルベドが低下するという点について調べた。大気エアロゾルを起源とする積雪不純物濃度は1-2月の積雪涵養期には10ppmw以下であったが、3月11-12日の黄砂イベントにより、その後の融解期には100ppmw以上を記録した。可視域のアルベドと積雪不純物濃度の関係は、札幌では積雪涵養期でも可視域のアルベドの低下に不純物が大きな効果を持っていることを示唆している。ダストイベント後、積雪表面の不純物濃度は約600ppmwという値を維持したが、可視域のアルベドは減少し続けた。その理由は不純物による可視域のアルベド減少効果は、積雪粒径が大きいほど顕著なためである。ダストイベント中の積雪サンプルからコールターカウンタで測定した不純物粒子の粒径分布を、レーザパーティクルカウンタで測定した大気エアロゾル粒径分布から雪面への乾性・湿性沈着粒子の粒径分布を計算し比較した。その結果、半径2.5um以上の巨大粒子を除いて、大気エアロゾルの湿性沈着からの寄与が重要であることが分かった。

成果となる論文・学会発表等	Te. Aoki， 2006， H. Motoyoshi， Y. Kodama， T. J. Yasunari， K. Sugiura， and H. Kobayashi， Atmospheric aerosol deposition on snow surfaces and its effect on albedo， SOLA， 2， 013-016， doi:10.2151/sola.2006-004. 青木輝夫，本吉弘岐，兒玉裕二，安成哲平，杉浦幸之助，谷川朋範，堀雅裕， 2005: 全天分光日射計による積雪の分光アルベドと積雪粒径情報の関係，講演予稿集，日本気象学会秋季大会， 2005年11月. 青木輝夫，本吉弘岐，兒玉裕二・安成哲平，杉浦幸之助，谷川朋範，堀雅裕， 2005: 全天分光日射計による積雪粒径・不純物濃度の鉛直情報量，第28回極域気水圏シンポジウム，国立極地研究所， 2005年12月. 杉浦幸之助，青木輝夫，兒玉裕二，大畑哲夫，本吉弘岐，石丸民之永， 2005: 札幌における吹雪時の長波放射特性に関する野外観測，講演予稿集，講演予稿集，日本気象学会秋季大会， 2004年11月.