共同研究報告書


研究区分 研究集会

研究課題

オホーツク海・亜寒帯循環のモデリングと今後の方向性
研究代表者/所属 北大低温研
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 三寺史夫

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

早稲田卓爾 東大工学研究科 助教授

2

淡路敏之 京大院理学研究科 教授

3

多部田茂 東大院工学研究科 助教授

4

宮澤泰正 地球フロンティア 研究員

5

山口一 東大院工学研究科 教授

6

池田元美 北大院地球環境 教授

7

江淵直人 北大低温研

8

大島慶一郎 北大低温研

研究集会開催期間 平成 17 年 2 月 18 日 〜 平成 17 年 2 月 18 日
研究目的 オホーツク海は東西にユーラシア大陸と太平洋、南北に北極圏と温帯(日本)という特徴的な地理的配置をしている。このため、北半球においてもっとも低緯度で結氷する海であり、地球温暖化が進めば季節海氷面積が減少するなど大きな影響が出ると考えられている。また、生産性が高く豊富な漁業資源を誇っているものの、その気候変動による影響が心配されている。このような環境変動を予測するためには、海洋・海氷モデルは欠くことのできない研究基盤である。本研究集会の目的は、極域海洋におけるモデリングの現在の知見と課題をオホーツク海に注目しながら概観し、当センターの活動の方向性を議論することである。
  
研究内容・成果 オホーツク海は長らく未知の海であったが、その循環など海洋物理的側面は近年行われた集中観測やレーダー、衛星観測によって次第に明らかになってきている。一方、海洋・海氷モデルも急速な進歩をしており、観測との直接的な比較を含めた定量的な議論が可能となってきた。今後、モデリングと観測が相まって、海氷の生成・消滅などオホーツク海に特有な現象による海洋循環への影響の解明がすすみ、さらには海洋環境変動予測、流氷予測等へと急速に発展するであろう。このような認識のもと、オホーツク海のモデリングにおける現在の知見と課題を概観し当センターの活動の方向性を議論するためのワークショップを、本年2月18日に開催した。国際的に第一線で活動している研究者の14件の発表を含む50人以上の参加者があり、活発な議論がかわされた。
ワークショップは3セッションにわけて行われた。1つ目のセッションはOn-going modeling approaches for the polar oceansとし、オホーツク海ばかりではなくバルト海等極域におけるモデル実験の発表があった。潮汐混合の重要さの議論、高解像度多層海氷モデル、蓮氷と波の力学的相互作用、ラグランジュ的な手法を用いた新たな海氷モデルの試み、などが紹介された。2つ目のセッションはApplication of sea-ice and ocean modeling to the Sea of Okhotskとし、オホーツク海研究の最新のレビュー、海洋-海氷結合モデル、海氷-生態系結合モデル、高解像度オホーツク海モデル、千島列島周辺の強い潮汐混合と海洋循環、に関する結果が紹介された。3つ目のセッションでは、What should be modeled? - viewpoints from observationとして、観測からの知見を通したモデリングへの提言が行われた。
ワークショップでは広範な話題が議論されたが、いくつかの発表で強調されたのは潮汐混合による水塊変質と海洋循環への影響である。オホーツク海では潮汐が強く沿岸域や千島列島周辺の鉛直混合の強さは外洋における通常の値の100倍から10,000倍にも達すると見積もられている。そのような海域では急速に水塊が変質し、それに伴って北太平洋で最も重い水である北太平洋中層水の形成が促されること、また混合による厚い水塊の流出がオホーツク海や北太平洋の循環に大きな影響を与えること、等が分かってきた。また、氷厚やポリニアの現実的な表現にはモデルの高解像度化やラグランジュ的な手法が有効であることも示された。これらの研究結果は当センターにおけるモデリング活動の方向性を考える上で重要な指標である。また、ワークショップを通して研究者の活発な交流や情報交換が行われ、国際研究拠点としての役割を担うことができた。