共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
雪氷コアを用いた北太平洋の気候変動復元 |
研究代表者/所属 | 北大低温研 |
研究代表者/職名 | 助教授 |
研究代表者/氏名 | 白岩孝行 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
斉藤隆志 | 京大防災研 | 助手 |
2 |
瀬川高弘 | 東京工業大学 | 博士課程2年 |
3 |
的場澄人 | (独)国立環境研究所 | 重点研究支援協力員 |
4 |
本山秀明 | 国立極地研究所 | 助教授 |
5 |
立花義裕 | 東海大学 | 助教授 |
6 |
白岩孝行 | 北大低温研 |
研究目的 | 北部北太平洋域で発現する十年〜数十年周期の気候変動の実態を、カムチャツカ半島ならびにアラスカ・ロッキー山脈で掘削した氷河コアから解明することが本研究の目的である。特に2003年に掘削したアラスカ・ランゲル山の50mコアの分析、1998年に掘削したカムチャツカ・ウシュコフスキー山のコアと2002年に掘削したカナダ・ローガン山のコアの比較、の2課題を平成16年度の中心研究課題とした。 |
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研究内容・成果 | <アラスカ・ランゲル山の50mコアの分析> 深度50mにわたり、水素同位体比、主要イオン、固体微粒子、トリチウム、精密X線密度の分析を実施した。その結果、このコアは1991年から2003年にかけて堆積したものであることが判明した。水素同位体比、固体微粒子濃度、トリチウムにはそれぞれ明瞭な季節シグナルを見いだすことができた。これらの季節シグナルを利用して、年間涵養速度を算出したところ、おおよそ2.5mであることがわかった。この値は1960年から1980年にかけて同様な方法で推定された年間涵養速度1.2mのほぼ2倍に相当する。これより、ランゲル山における涵養速度は近年大きく増加傾向にあることが判明した。 <カムチャツカ・ウシュコフスキーコアとカナダ・ローガンコアの比較> ウシュコフスキーコアとローガンコアの酸素同位体比にみられる季節振動を利用して、両地点の過去100年間の年間涵養速度を求め、両者を比較した。その結果、10-30年周期の振動が両地点のコアにみられ、かつ両地点の振動は逆相関をもつことが判明した。これは、北部北太平洋で発現するPDO(Pacific Decadal Oscillation)と呼ばれる気候振動が、北部北太平洋の両岸の山地の降水量に大きな影響を及ぼしていることを示す。事実、ウシュコフスキーコアの年間涵養速度の時系列データはPDOの時系列データと良く一致した。 これらの成果により、PDOが北部北太平洋の雪氷圏に与える影響がはじめて示された。今後は、PDOが物質循環に及ぼす影響を、両岸の雪氷コアの分析から解明していく予定である。 |
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