共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
海氷の形成・融解過程と海洋構造との関係 |
研究代表者/所属 | 海洋研究開発機構 |
研究代表者/職名 | 研究員 |
研究代表者/氏名 | 島田浩二 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
渡邊修一 | 海洋研究開発機構 | グループリーダー |
2 |
伊東素代 | 海洋研究開発機構 | 研究員 |
3 |
牛尾収輝 | 国立極地研究所 | 助手 |
4 |
長島秀樹 | 東京海洋大学 | 教授 |
5 |
深町康 | 北大低温研 |
研究目的 | 本共同研究では両極を含む「凍る海」での海氷消長メカニズムの理解を深めることを目的とする。また、北極海、南極海、オホーツク海で得られた知見について情報交換を行い、国際極年を間近に控えた我が国の極域研究の活性化に貢献することも視野に入れている |
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研究内容・成果 | 日本とカナダの共同観測研究プロジェクト(JWACS: Joint Western Arctic Climate Studies)では、2002-2004年の3年間で当初計画通り、複数船舶を用い西部北極海南部海域のほぼ全域をカバーする観測が実現できた。その結果、塩分躍層を形成する起源水は、東シベリアの冬季水(S=32.0)、太平洋起源の冬季水(S=33.1)、太平洋冬季水のうち海氷形成で塩分付加された高塩分の冬季水(S=33.5)、東部北極海起源の高酸素な冬季水(S=34.5)、東部北極海起源の低酸素な冬季水(S=34.5)の5つに分類できることが明らかになった。このように、西部北極海の塩分躍層は、異なる起源水が、異なる密度面に貫入して形成され、東部北極海の塩分躍層とは異なる構造を呈することが理解された。 一方、南極海では以下の結果が見出された。2003年1月の東京海洋大学海鷹丸にて、南大洋ケルゲレン海堆でのLADCP およびCTD 観測を実施し、等深線に沿って北西向きに流れる底層水境界流の流量について見積もりを行った。LADCP で観測された流向・流速を調べると、陸棚斜面上のほとんどの観測地点で北西から北向き、最大で15cm/sの流れになっていた。また、陸棚斜面上の1測点で北東向きの流れが観測され、渦構造を含む流れであることが分かった。北西向きの境界流の流量をLADCPデータから求めたところ、10Svであった。Speer and Forbs(1998)と同様にCTDデータから2500db 基準の地衡流を求めたところ、LADCPで実測した分布とは大きく異なっていた。ケルゲレン海堆斜面上の境界流は順圧性の高い流れであるため、無流面を用いた地衡流計算を用いると、実際の流速分布と大きく異なる流れ場を見積もってしまう可能性が示唆された。 1996年以降、南緯60度以南の海洋構造・循環のデータ取得を目指し、国際Argo計画に先駆け南大洋でプロファイリングフロートを投入している。ウィルクスランド沖、南緯63度付近の南極発散域のフロートは、明瞭な低気圧性渦を描きつつ西方に漂流した。このフロートの漂流軌跡、水温分布データと衛星画像による海氷分布との関連を調べた結果、渦とポリニアの位置はほぼ一致し、発散域の中でも活発な湧昇の存在が示された。上述の海鷹丸航海では、フロート5台が投入されている(平成17年2月現在、稼働中)。また、過去25年間にわたる南極リュツォ・ホルム湾の海氷変動を衛星画像や砕氷航行データを基に調べた結果、近年頻発している定着氷の崩壊・流出と氷上積雪、沖合流氷の消長との関連が見出された。今後、他海域の沿岸海氷特性とも比較し、時空間変化の特徴抽出を試みる予定である。 |
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