共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

冷凍食品表面の水分移行に及ぼす氷/水/油の相互作用の効果
研究代表者/所属 広島大学生物圏科学研究科
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 佐藤清隆

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

双和祥二 広島大学生物圏科学研 院生

2

白澤聖一 日清オイリオ(株) 研究員

3

上野聡 広島大学生物圏科学研 助教授

4

古川義純 北大低温研

5

片桐千仭 北大低温研

研究目的 近年、冷凍食品の消費が急増しているが、レンジ加熱用冷凍フライは揚げたてのフライを再現できない。これは、流通段階で冷凍・長期保存期間中に、内部の水分が外ににじみ出て、衣を湿らせるためである。このような劣化を防ぐ方法の中で、フライ油の融点を調節して、冷凍保存中の固形分の値を全体の半分程度にすると、サクサク感が持続されることが明らかとなった。本研究では、フライ油の物性を調節することによって、水分移行量が変化するという結果を確認するとともに、冷凍保存状態におけるコロッケ表面の光学顕微鏡観察によって得られるマクロな構造を解明し、半固体脂による劣化防止のメカニズムの解明を目指した。
  
研究内容・成果 1.材料と方法
 半固体脂によりフライした冷凍食品表面への水分移行が抑制される機構を明らかにするために、コロッケの構造を、澱粉や蛋白質、水分(氷)からなる「水相」(パテ)、湿った「衣」(澱粉、卵など)の「界面」(バッター)、そして揚げた「衣」の「油相」という3つの階層を含む層状構造と捉えて、以下の実験を行った。
サイズ・バッター量・マッシュポテトの水分量を一定として、ダブルバッターの標準的なコロッケを調製し、複数のフライ油脂(冷凍保存温度で液状、半固体、固体)でフライ調理を行った。フライ後急速冷凍し、-10℃で保存した。保存中のコロッケの衣をサンプリングし、重量法により衣中の水分量及び外気からの水分吸着量の経時変化を測定した。またより単純なモデルとして、油をろ紙にしみこませた油膜を作製し、低温条件下で油膜を透過する水分量の比較を行った。またその界面モデルの低温下での走査型電子顕微鏡観察を行った。

2.結果と考察
衣への水分の移行、ならびにフライの界面のモデルである油膜を通した水分移行の実験から、冷凍温度において固体、液体の油よりも半固体の油の方が水分移行の進行が遅いことを確認し、また外気から衣への水分の吸着は品質に影響がなく、衣の劣化はパテからの水分移行によるものと確認した。電子顕微鏡によるフライ油脂の微細構造の観察から、冷凍温度におけるフライ油の微細な結晶の存在が、水分移行を抑制しているとした。すなわち、一般的なコロッケの構造モデルにもとづけば、内側の水相から界面であるバッターを通して、油相である「衣」に水分が移る際に、油相と界面にある半固体脂の油脂結晶のネットワークが、移行を抑制していると考えられる。その詳細な実態はまだ不明であるが、W/Oエマルションの形で移行するとすれば、油脂結晶のネットワークがその運動を幾何学的にブロックすることも可能である。半固体脂の場合は、マーガリンにおける油脂結晶のネットワークと同様に、そのネットワークが稠密となる.それに対して、完全な固体脂の場合は、ネットワークが稠密とならずに、水滴の運動の抑制効果が小さいと考えられる。