共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

東シベリアの永久凍土およびアラスの年代学的研究
研究代表者/所属 名古屋大学年代測定総合研究センター
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 中村俊夫

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

森泉 純 名古屋大学工学研究科 助手

2

福田正己 北大低温研 教授

研究目的 東シベリアの中央ヤクーチア周辺に存するアラスは森林破壊の結果安定して持続すると同時にメタンを放出する原因ともなる.今後に予想される地球温暖化によるアラスの拡大が危惧されるが,この予想のためには,現存するアラスの形成時期やその環境を調べることが不可欠である.そこで,現存するアラスを調査し,堆積物を採取して,14C年代測定及び花粉分析などの環境解析を行うことを、本研究の目的とする。但し、現地調査やアラスの調査ができなかった場合を考えて、永久凍土や氷体中のメタンなどに関連する研究を進めることも合わせて研究目的とする。
  
研究内容・成果  福田・森泉ら(2001)によって、アラスカのGround Ice Fox Tunnel内の永久凍土中から採取されたアイスウエッジアイス内には、高濃度のメタンが蓄積されており、バクテリアの活動により堆積物中の有機物が分解されメタンが生成されることが考えられてきた。実際、アイスウエッジアイスの中から、生きたバクテリアの存在が確認され,バクテリアによるメタンの生成が示唆される。このアイスウエッジアイスについては、抽出されたメタンを直接14C年代測定することにより24 kaの年代(delta13C= -85permil)が得られており、24 kaの昔に閉じ込められたバクテリアである。この研究をさらに発展させ、メタン生成菌を検出すること、さらにDNA解析を行うことを計画している。また、シベリアの永久凍土との比較が興味を持たれる。
 ロシア連邦サハ共和国の北端のユカギル村から東方約30km離れた川の南側斜面の永久凍土中に発見されたマンモスの遺体が、愛知県で開催される2005年日本国際博覧会にて凍結状態で展示される。このユカギルマンモスの遺体について14C年代測定を行い、マンモスの生存時期とその古環境変遷に関して検討を行った。14C年代は、18-19 kaと得られており、これは最終氷期の最盛期にあたる。この時期の東シベリアは、極低温、乾燥の気候であり、この地域で生育することは困難とされ、他所から死体が流されてきたものと考えられた。しかし、このユカギルマンモスが発見された周囲の地層の14C年代はマンモスの年代と同様な値が得られており、現地性のものと考えられる。従って、18-19 kaにこの地域がマンモスが生存する環境にあったことになり、東シベリアの古環境に関してこれまで考えられていたことと異なっており、データ収集の強化や議論を進めている。
 東シベリアのアラスについては,十分な調査を行えなかった。そこでとりあえず,これまでに得られている分析データをとりまとめて,研究成果を整理することになった.