共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
氷アグリゲ イトの空力学的分裂に関する実験的研究 |
研究代表者/所属 | 海洋研究開発機構 |
研究代表者/職名 | 研究員 |
研究代表者/氏名 | 門野敏彦 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
門野(三谷)典子 | 東大地震研 | 学振特別研究員 |
2 |
荒川政彦 | 北大低温研 |
研究目的 | 地球には隕石のような岩石だけでなく,彗星などの氷天体も多く衝突したと考えられている.しかし彗星のような氷微粒子の集合体が大気と相互作用した場合どのような結果(変形,分裂,分裂片のサイズ分布など)になるのかは,よくわかっていない.そこで,実験室内で微粒子集合体や液体を大きな相対速度で気流と相互作用させ,変形の様子,分裂のモード,分裂後の破片のサイズ分布などを実験的に調べている.これらの結果から気体との相互作用による集合体や液体の変形・分裂という現象を理解することを,本研究の目的とする. |
研究内容・成果 | 今年度は,ニクロム線により加熱され溶融したシリケート(2PbO-SiO2)と高速気流を相互作用させる実験を行い,シリケート液体が分裂する様子を調べた.高速気流を発生させるために低温科学研究所の衝撃波管(長さ:高圧部0.5m,低圧部1m,断面サイズ:6cm×6cm(矩形))を使った.今回マッハ数は1.03〜1.15であった. まず高速気流による分裂後のサイズ分布を二種類の方法で調べた.一つは低温科学研究所の高速デジタルビデオカメラ(MEMRECAM K3, nac co. Ltd.)によって現象を撮影し(カメラの撮影速度は3千コマ/秒,露出時間は10マイクロ秒,1画面の画素数は640×344ピクセル),画像を解析することによりサイズ分布を求める方法である.画面上の「破片」の面積から,形状を球と仮定してサイズを推定し,分裂後のサイズ分布を求めた.もう一つは,飛散後固化した破片を回収する方法である.回収後デジタルノギスで直径を測定し,サイズ分布を求めた. 二つの方法で得られた破片の積算個数分布(あるサイズ以上の液滴破片の個数)は矛盾のない結果を示し(図1),画像解析でも正確なサイズ分布が得られることがわかった.さらに分布は指数関数で表されることがわかった.つまり,片対数でプロットすると直線を示す.これは水などの常温で液体の物質でも同様であり,分布の傾きもWeber数によってこれまでの実験の結果と矛盾なく表されることがわかった(図2). また,分裂・非分裂の境界についても,Weber数とOhnesorge数を使うと水やグリセリンでの結果と矛盾のない結果が得られた. 以上より,高速気流による液体分裂という現象は,溶融したシリケートであってもWeber数とOhnesorge数により水などと統一的に記述されるということがわかった. これまでに得られた結果は下記の論文・集録にまとめられている. T. Kadono and M. Arakawa Breakup of liquids by high velocity flow and size distribution of chondrules Icarus vol. 173, 295-299, 2005. T. Kadono, M. Arakawa, and A. Kouchi Breakup of molten silicate by high-velocity gas flow Proceedings of 37th ISAS Lunar Planetary Symposium vol. 37, 37-40, 2005. |