共同研究報告書
研究区分 | 研究集会 |
研究課題 |
菌類とそれを利用する動物群集 |
研究代表者/所属 | 北大低温研 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 戸田正憲 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
都野展子 | 長崎大医学部 | 助手 |
2 |
山下聡 | 名古屋大農学部 | 大学院生 |
3 |
津田格 | 岐阜県立森林センター | 職員 |
4 |
杉浦真治 | 京大農学部 | 大学院生 |
5 |
山下博司 | 京大農学部 | 大学院生 |
6 |
赤石大輔 | 金沢大理学部 | 大学院生 |
7 |
萬屋宏 | 北大低温研 | 大学院生 |
8 |
窪田江美子 | 北大低温研 | 大学院生 |
9 |
木村正人 | 北大地球環境科学研究科 | 教授 |
研究集会開催期間 | 平成 15 年 11 月 23 日 〜 平成 15 年 11 月 23 日 |
研究目的 | 森林の成立と更新の両面においてキノコを形成する菌類が果たす役割は、非常に大きいと考えられている。また菌類の子実体であるキノコは、菌類の繁殖に重要な器官であるが、昆虫類をはじめとする動物群集の中には、これらを主な食物資源としているものが多くいる。それゆえ、森林生態系の維持と更新を理解するには、菌類とそれを利用する動物群集の生態的相互作用の研究が重要であると考えられるが、これまでは、断片的な記録が多く未解明の部分が多く残されている。そこで本研究集会においては、現在この分野の研究を行っている大学院生が主体となって各々の視点からこの生態的相互作用の知見を発表し、議論を深めることを目的とした。 |
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研究内容・成果 | 本研究集会は、2003年11月23日に当研究所・3階講堂にて約30名が参加して開催された。発表プログラムとその内容は、以下の通りである。 1)戸田正憲(北大・低温研) “キノコ食ショウジョウバエの系統進化” 菌類は、重要な繁殖資源であるが、キノコ食ショウジョウバエ類は、いくつかの系統で独立に進化してきたと考えられる。 2)高橋一男(北大・地球環境) “木材腐朽菌の分散と昆虫との関係” キノコの胞子分散は、大半が風分散によるものと考えられてきたが、昆虫がしている可能性があり、その効果は、樹種、材径により異なることが野外実験により示唆された。 3)津田 格(岐阜県立森林文化アカデミー) “キノコを利用する線虫” 線虫という動物群は、キノコとの関わりも多様であるが、本研究集会では、キノコバエ科昆虫に寄生する線虫を主に紹介した。 4)Stephane R. Prigent (京都工芸繊維大) “Amylase adaptation to mycophagy” キノコ食ショウジョウバエのアミラーゼは、果実食のショウジョウバエのものと異なりキノコに多く含まれるグリコーゲンに適応している。 5)萬屋 宏(北大・低温研) “キノコ食ショウジョウバエ類の共存に対する寄生蜂の効果” キノコ-ショウジョウバエ-寄生蜂の三者の量的食物網を用いて、ショウジョウバエ類の共存における寄生蜂のトップダウン効果を評価したところ共存にプラスの影響を与えていることがわかった。 6)杉浦真治(京大・農) “変形菌子実体をめぐる甲虫群集の構造と動態” 変形菌子実体を利用する甲虫類は、寄主範囲がある程度決まっていて特定の選好性があることが変形菌の属ごとの群集構造を特徴づけていた。 7)山下博司(京大・農) “殺ハエ成分をもつイボテングタケとそれを利用するハエ群集” キノコの発育段階に応じて、ハエ群集の構成が変化しが、これはキノコの発育段階が進むにつれて、防御物質のイボテン酸などが自己分解された結果によると推測された。 8)赤石大輔(金沢大・理)“金沢市の里山におけるキノコ利用双翅目の群集構造と共存機構について” 金沢市の里山においてキノコ食ハエ類の資源利用パターン、季節消長、キノコの発達段階との関係に注目し、ハエ目種間の相互作用について報告した。 9)山下 聡(名古屋大・森林保護) “ハラタケ目の子実体を利用する昆虫群集の様式” キノコの時空間分布を定量化し、キノコ資源の予測性が昆虫類の利用様式(食性幅など)に与える影響を評価した。 本研究集会では、キノコの発生様式や化学的特性が動物群集に与える影響、キノコを利用する昆虫類の群集パターンや共存機構、昆虫におけるキノコ食性の進化的背景など様々な視点から研究発表が行われ議論がなされた。その結果、参加者全員が、今後の研究の展開に対して新たな視点や情報を得ることができ、非常に有意義であった。 |
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