共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

酸化物系超伝導薄膜のVapor-Liquid-Solid成長に関する基礎研究
研究代表者/所属 名大工
研究代表者/職名 助教授
研究代表者/氏名 吉田隆

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

古川義純 北大低温研

研究目的 我々は、平成11年度から、氷などの表面観察やシュミレーションなどの方法でVLS成長に関して多くの知見がある北大低温研古川先生のグループと共同研究を行い、酸化物系薄膜におけるVLS成長メカニズムに関して検討を行っている。
昨年度までは、酸化物系薄膜におけるVLS成長メカニズムを解明するために、表面での電子状態を理解する手段の確立及び光学的手法を用いたin-situ(その場観察)モニタリングによるVLS成長の観察を行ってきた。
本年度は、これらの研究を踏まえ、VLS成長を用い高臨界温度が期待される酸化物系超伝導線材の研究開発を行った。特に成長途中における液相の安定性に関して検討した。
  
研究内容・成果 本研究では、VLS成長を進行するために必要な液相の安定性を、第三元素添加によって向上することを目的とした。
実験方法は、液相であるBa3Cu7OyにAg2Oを添加して融点を下げる実験を行った。融点測定にはDTA-TG装置を用いた。また、成膜方法は、PLD法により基板温度を超伝導薄膜の蒸着温度と200℃で作製後に蒸着温度まで上げる2通りで液相膜のみ作製した。その液相膜をXRD法を用いて測定し、固相のピークが見られるか調べた。その後、VLS法を用いて基板温度750℃、800℃、850℃の条件でSmBa2Cu3Oy薄膜を作製し、超伝導特性の検討を行った。
その結果、融点測定の結果、Ag2Oを8wt%添加したときBa3Cu7Oy材料の融点が約30℃下がることが確認された。また、蒸着温度で作製した液相膜については基板温度750℃でBaCuO2とCuOの固相のピークが見られた。安定な液相として存在していないと思われる。一方、200℃で作製後に750℃まで上げた液相膜には、ピークは見られず、安定な液相として存在していると思われる。Ag添加と作製プロセスの改良により、液相としての安定性が向上できることが確認される。
さらに、Ag2Oを8wt%添加したときBa3Cu7Oy材料を液相として用いたVLS-SmBa2Cu3Oy薄膜の超伝導特性は、基板温度800℃においてTcは90K、Jcは0.9MA/cm2(77K,0T)を確認した。