共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
フィブリノーゲン水溶液の低温ゲルに及ぼす多糖類の影響 |
研究代表者/所属 | 群馬大学工学部 |
研究代表者/職名 | 助教授 |
研究代表者/氏名 | 外山吉治 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
小暮広行 | 群馬大学工学部 | 博士後期課程 |
2 |
落合正則 | 北大低温研 |
研究目的 | フィブリノーゲン水溶液を低温に曝すと不溶化し、他の血漿タンパク質と複合体を形成しゲル化する。この複合体は“クリオゲル”と呼ばれ、レイノー病やリュウマチなどの疾患と深く関与する。本研究ではフィブリノーゲン水溶液の低温ゲル形成に及ぼす多糖類の影響として、環状シクロデキストリン及びヘパリンに注目し、ゲルネットワークを構成するフィブリノーゲン繊維の形状変化を濁度の波長依存性より調べた。 |
研究内容・成果 | ウシ血漿由来フィブリノーゲン水溶液にアルファ-,ベータ-,ガンマ-シクロデキストリン及び分子量の異なる(3000,5000,未分画)ヘパリンを添加したものを試料とした。これらの試料を1℃に急冷した後、波長(L)400nmから800nmにおける濁度(T)変化を測定した。解析は形成されたフィブリノーゲン繊維の径が波長に比べ無視できる場合はT=Cm/(AL^3) (1),無視できない場合はC/(TL^3)=A/m+Br^2/(mL^2) (2)を用いて繊維の単位長さ当たりの質量m(Da/cm)を求めた。ここで、cはフィブリノーゲン濃度,rは繊維の半径,AとBは定数である。 図1にアルファ-,ベータ-,ガンマ-シクロデキストリンを濃度1%で加えた時のフィブリノーゲン繊維のm値の経時変化を示す。ベータ-シクロデキストリンはフィブリノーゲンの繊維化を抑制し、アルファ-及びガンマ-シクロデキストリンは完全に阻止した。図2に分子量の異なるヘパリンを濃度0.1%で加えた時のフィブリノーゲン繊維のm値の経時変化を示す。いずれのヘパリンも繊維化を促進し、分子量の増加とともにその効果は増大した。 最近、環状オリゴ糖の一つであるシクロデキストリンに血液の抗凝固作用があることが見出された。本実験結果からシクロデキストリンはクリオゲルの形成に対しても強い抑制効果があることが分かった。一方、抗凝固剤として臨床で広く用いられているヘパリンはクリオゲル形成に対しては逆に促進効果を示すことが分かった。今後、これらの作用機序について詳しく調べていく予定である。 |