共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

オホーツク海沿岸の岩石海岸にみられるicefootの研究
研究代表者/所属 法政大学経済学部
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 田渕洋

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

小沢和浩 法政大学経済学部 教授

2

白澤邦男 北大低温研

研究目的  アイスフット(icefoot)とは、高緯度地帯や局地の海岸(潮感帯)でみられる波浪が凍結して形成される氷の塊である。オホーツク沿岸の網走に近い浜小清水原生花園の海岸では、12月になるとサンドスラブ、アイススラブの形成が始まる。1月になって月平均気温が-10℃以下になるとアイスフットの成長が始まる。3月になるとアイスフットの衰退が始まりアイスフット上にアイスケトルなどの凹地地形が形成される。本研究では砂質海岸および岩石海岸の衰退期を迎えたアイスフットの観察を目的とする。
  
研究内容・成果  一般的にアイスフットは高潮面と低潮面の影響を受けて3つのゾーンから形成されるとされている。Owens(1976)は、アイスフットをicefoot、hinze zone、sea iceに分けており、Fournier and Allard(1992)は、アイスフットを3つのゾーン、icefoot, hinge icefoot, stand ice に分けている(季刊地理学、55-3(2003)、p.206参照)。このような現象はオホーツク海岸のアイスフットでもよく見られる現象である。オホーツク沿岸の砂・礫からなる堆積海岸では、冬季に月平均気温が-10℃以下になると、アイスフット、アイスケトルなど各種の週氷河地形が発達することが観察されている。また、以前の我々のアイスフットの測量によって、アイスフットが形成されている期間の海岸は堆積期でも侵食期でもない、安定期であることが明らかにされてきた。今回および過去3年の調査ではアイスフット、アイスケトルなど衰退過程を確認し計測を行っている。計測場所は、浜小清水原生花園、オムサロ原生花園である。3月中下旬の浜小清水の原生花園の砂質海岸では衰退期のicefootが観察された。また同時期のオムサロ原生花園の砂質海岸では大小さまざまな数多くのアイスケトルが観察された。大きいものでは直径が3メートル以上、小さいものは直径数十センチ程度である。
 地形学では、海食崖が形成されている岩石海岸では、ノッチは海食崖の基部や岬に形成されると説明されている。しかし、寒冷地の海食崖を観察すると波の営力の弱いところにもノッチが形成されている。このノッチの成因は乾・湿の繰り返えしによって高潮面と低潮面の間の(潮感帯)での凍結・融解の繰り返しによることは明らかである。今回の調査によれば網走の岩石海岸では、凍結・融解が繰り返される結果として、波の力の弱いところにもノッチが形成されていることを確認した。これはrocky cliff icefoot が形成されていたことを裏ずける侵食の形状と思われる。海食崖が形成されている岩石海岸では、高潮面と低潮面の間では、乾・湿の繰り返しで海食崖の基部にノッチが形成されることが多い。これに対し周氷河気候下では、満潮面と干潮面の間で凍結・融解が繰り返される。そして氷のひさしが形成される。この地形が岩石海岸のicefootつまりrocky cliff icefootである。