共同研究報告書提出

共同研究報告書

研究区分	一般研究
研究課題	北米ローガン山の雪氷コアを用いた近年の環境変動に関する研究Ⅱ
研究代表者／所属	北大低温研
研究代表者／職名	助教授
研究代表者／氏名	白岩孝行

研究分担者／氏名／所属／職名
	氏　　名	所　　属	職　　名
1	東久美子	国立極地研	助教授
2	幸島司郎	東京工業大学	助教授
3	的場澄人	国立環境研	重点研究支援協力員
4	瀬川高弘	東京工業大学	博士課程2年
5	齊藤隆志	京大防災研	助手
6	白岩孝行	北大低温研	助教授
7	金森晶作	北大低温研	修士課程2年

研究目的	本研究は、2002年6月に北米ローガン山において研究代表者らによって掘削された全長220mの雪氷コアの物理・化学・生物学的な解析により、北極圏の北太平洋セクターにおける過去1000年程度の古環境・古気候を高時間精度で復元することを目的としている。従来、北極圏の古気候・古環境は主として大西洋セクターにおける雪氷コアを用いて復元が試みられてきたが、太平洋セクターにおけるデータはほとんどなく、本コアの解析結果は、世界に先駆けて太平洋の情報を提供することになると期待されている。

研究内容・成果	平成14年年度に引き続き、ローガン山雪氷コアの各種分析・解析を実施した。東はコアの上部70mについて、酸素同位体比および主要イオンの分析を実施した。的場はコアの浅層部に着目し、微量金属の分析を行った。瀬川・幸島はコア全体にわたり藻類およびバクテリアの分析を実施した。金森は深度70m付近までのコアの密度をX線を用いて詳細に解析した。白岩・斉藤は、コアの全層にわたり、結晶粒径とC軸ファブリックの解析を実施した。以上の解析により、以下のことが判明した； 1．コア中の風送塵は、鉛の同位体比からアジア起源であると考えられる； 2．酸素同位体比は季節変動し、年代決定に利用できる； 3．主要イオン濃度、特にMSAは季節変動し、年代決定に利用できる； 4．藻類・バクテリアの濃度は大変小さい； 5．密度は季節変動し、年代決定に利用できる； 6．コアのC軸ファブリックから、この氷河は以下の3層に区分できる；1)鉛直の応力が卓越する90m以浅；2)鉛直の応力に加え、側方からの応力が働き始める90-200m；および3)剪断と側方からの応力が作用する200-220m。　今後は、各機関に送付した試料の分析結果を待って、更なる解析を進めたい。密度と酸素同位体比によって年代決定できる可能性がでてきたため、本コアを用いて北太平洋における高時間分解の気候変動を復元できる見込みがついた。