共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

海氷の発達・融解過程と海洋構造の関係
研究代表者/所属 海洋科学技術センター
研究代表者/職名 研究員
研究代表者/氏名 島田浩二

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

伊東素代 海洋科学技術センター 特別研究員

2

牛尾収輝 国立極地研究所 助手

3

青木茂 国立極地研究所 助手

4

深町康 北大低温研

研究目的 海氷消長は極域環境科学の主テーマであると同時に、アイス・アルベド・フィードバックを通じて地球気候システムの平衡状態に遷移をもたらす重要な因子である。本テーマでは、オホーツク海,北極圏海域,南大洋を主な対象とし,海氷の季節内変動から経年変動、冬季水・深層水の形成・移流過程及び海洋-海氷変動に関しての知見を深めることを目的とする。
  
研究内容・成果 北極海では、2002-2003年に夏季海氷面積が最小となったが、海氷減少の空間パターンはベーリング夏季水の空間分布と符合していることが確認された。また、1990年代以降の海氷減少とベーリング夏季水の水温上昇とに関連が見出された。一方、チャクチ海アラスカ沿岸のポリニアにてさらに高密度化される冬季陸棚水のカナダ海盆域での水温は低下しており、ベーリング夏季水変動とは逆位相になっていることが確認された。夏季水、冬季陸棚水の変動はいずれも、ボーフォート高気圧の強度と関連していた。
 南大洋では、複数船舶による集中観測が実施され、それらの解析結果が報告された。南極アデリーランド沖で生成される底層水は、ウェッデル海、ロス海以外の主な南極底層水であり、ケルゲレン海台東斜面を主経路として低緯度海洋に輸送される。海台東斜面上には高フロン濃度の水が観測され、新たにventilate された底層水の存在が確認された。また、LADCP及びLADCP準拠の地衡流計算を行った結果、流れのパターンは以前の観測結果(Speer and Forbes, 1994)と同一構造であったが、流量に関しては、異なっていた。経年変動の結果であるのか、季節変動の結果であるのかは、今後の観測、特に来年度回収予定の係留データに期待される。
海鷹丸による観測では、ケルゲレン海台を北上する流れの上流にあたる海域で観測が実施された。東経130度30分の測線においてLADCPによる海底直上までの流れ場を直接測流により求めた。その結果は、海面でのADCP計測流速を基準とした地衡流場(Bindoff et al, 2000)とは、定量的な違いが見られた。東方の東経140度上の測線は、磁南極に近く、加速度計を用い方位の測定を試みた。また、Turbomap(乱流観測プロファイラー)を用いた観測を試みたが、十分なデータは得られず、システム(特にウインチ)の極低温に対する対策が重要であることがわかった。一方、CTDによって計測された密度逆転から力学的要因による現象をGKフィルターにより抽出して解析し、slope currentの水塊形成及び混合過程、さらに南大洋における鉛直拡散など、グローバルな海洋構造及び循環形成に関わるミクロ・プロセスからのアプローチも行った。
 南大洋における海氷変動に関して、データ解析及び単純化モデルの両側面からの研究が報告された。SSMIデータ及びSSTデータを解析した結果、卓越モードが波数3のパターンであり、その伝播特性が明らかになった。海氷消長過程のメカニズムを理解し、さらに、長時間積分が必要な気候モデルに適用するためには、より単純なエッセンスを抽出した単純なモデルが必要となる。南大洋における融解期の海氷変動を、氷厚、混合層深を固定し、密接度の変化を記述する海氷と海洋を結合モデル(非線形系)を考案した。非常に単純なモデルではあるが、南大洋の融解期の海氷変動特性を海域に依らず再現することが示された。