共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

氷微粒子集合体と高速度気体流との相互作用
研究代表者/所属 海洋科学技術センター
研究代表者/職名 技術研究員
研究代表者/氏名 門野敏彦

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

荒川政彦 北大低温研

研究目的 太陽系形成過程において,惑星集積後期から現在に至るまで地球には多くの天体が衝突した.その中には彗星のような氷天体も含まれていたと考えられている.彗星は空隙率が高く強度が弱いとされており,このような物体が地球の大気に突入すると,大気との相互作用の影響により多数の破片に分裂する,という可能性も指摘されている.しかしながらこのような空隙の多い物質と大気との大きな相対速度下での相互作用はよくわかっていない.これを明らかにするのが本研究の目的である.
気流との相互作用で分裂した液滴破片のサイズ分布  
研究内容・成果 今年度は実験システムを確立させるため,まず液体と高速気流を相互作用させる実験を行い,液体がその結果どのような振る舞いをするのかを調べた.液体としては水,グリセリン,および水とグリセリンの混合物(グリセリンの体積比63%)を用いた.高速気流を発生させるために低温科学研究所の衝撃波管(長さ:高圧部0.5m,低圧部1m,断面サイズ:6cm×6cm(矩形))を使った.今回マッハ数は1.01〜1.12であった.
高速気流による液体の変形・分裂の様子を低温科学研究所の高速デジタルビデオカメラ(MEMRECAM K3, nac co. Ltd.)によって撮影した.カメラの撮影速度は3千-4千コマ/秒,露出時間は10-20マイクロ秒,1画面の画素数は640×256ピクセルである.
分裂の境界(分裂が起こる,起こらないの境界)やモード(中央がくぼむ花弁型,外側からはがれるストリップ型,全体が激しく分裂するカタストロフィック型)は,過去の高速気流による液滴の分裂実験により調べられており, Weber数ρg(v^2)L/σとOhnesorge数μ/((ρlσL)^1/2)に依存していることが知られている.ここでρgは気流の密度,vは気流の速度,Lは液体の特徴的サイズ,σは液体の表面張力係数,μは液体の粘性率,ρlは液体の密度,である.特に,Ohnesorge数が〜0.1以下では分裂のモードはWeber数のみに依存することがわかっている. 今回の結果は過去の研究の結果と矛盾はなかった.
また,画面上の「破片」の面積から,形状を球と仮定してサイズを推定し,分裂後のサイズ分布を求めた.破片の積算個数分布(あるサイズ以上の液滴破片の個数)は指数関数で表されることがわかった.つまり,片対数でプロットすると直線を示す(図参照).また,このときの分布の傾き(その逆数は平均サイズを表している)は, Weber数とともに減少することがわかった.
気流との相互作用で分裂した液滴破片のサイズ分布