共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
北方林の更新維持機構の生態学的・遺伝学的解明 |
研究代表者/所属 | 名古屋大農 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 山本進一 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
戸丸信弘 | 名古屋大農 | 助教授 |
2 |
加藤京子 | 名古屋大農 | 研究生 |
3 |
宮所拓自 | 名古屋大農 | 院生 |
4 |
藤井万祐子 | 名古屋大農 | 院生 |
5 |
原登志彦 | 北大低温研 | 教授 |
6 |
隅田明洋 | 北大低温研 | 助教授 |
研究目的 | 北方圏の環境変動に対する北方林の役割を科学的に解明するために、北方林の更新維持機構を生態学的に、そしてそのベースとなる現象を遺伝学的に解明すること。低温研の研究分担者とともに、東大雪の北方林の老齢林分に長期固定試験地を設定し、北方林の更新維持機構の解明のための基礎データ収集としての森林調査をこれまでに行ってきた。本年度は、これまでのすべてのデータについて解析を行い、本長期固定試験地の北方老齢林分の生態について低温研にて検討を行った。 |
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研究内容・成果 | 1)プロット内には、トドマツ・エゾマツ・アカエゾマツ・ダケカンバが多く出現した。個体数では、稚樹・幼樹・成木の各成育段階において、いずれもトドマツ・エゾマツ・アカエゾマツの順に優占していた。サイズ分布から判断すれば、本林分では順調に更新が行われていると考えられた。 2)林床に占める倒木面積は非常にわずかであるのにも関わらず、プロット内に出現した針葉樹稚樹の60%以上が倒木上に生育していた。しかし、倒木上には非常に密に稚樹が存在するために、密度効果による自然間引きが起こり、生残しにくいことが示唆された。 3)針葉樹の稚樹の出現に光環境の影響は認められなかったが、エゾマツ稚樹の出現に林冠ギャップが影響を及ぼしていた。エゾマツにとって、大きなサイズになるまで生残するためには光環境が重要であることが示唆された。 4)針葉樹稚樹はいずれもササの被度が高いところほど密度が低く、幼樹段階においても同様の傾向がみられた。ササの被覆は、実生や稚樹の段階で更新阻害要因として強く働き、その効果が幼樹段階における密度にも影響していると考えられた。 5)針葉樹稚幼樹の出現に影響を及ぼす要因中で、どの要因の影響が強いかを重回帰分析で調べたところ、稚樹の出現には倒木被度とササ被度が、幼樹の出現には光強度とササ被度が強い影響を与えていた。 6)以上のように、稚樹段階では針葉樹の出現に倒木やササが強く影響し、幼樹段階になると光環境とササが強く影響を与えるようになっていた。このことから、針葉樹の出現にとって、生育段階が進むにつれて倒木の重要性は低下し、光環境が重要となってくることが示唆された。また、ササの影響は生育段階が進んでも残っていることが示唆された。 |
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