共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

北海道太平洋側沿岸に発生する霧の構造に関する研究
研究代表者/所属 気象研究所環境・応用気象研究部第二研究室
研究代表者/職名 主任研究官
研究代表者/氏名 山本 哲

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

木下宣幸 気象研究所物理気象研 第二研究室主任研究官

2

石元裕史 気象研究所気象衛星・ 第一研究室主任研究官

3

鈴木 修 気象研究所気象衛星・ 第二研究室主任研究官

4

藤吉康志 北大低温研

研究目的  北海道太平洋沿岸は日本有数の霧多発地帯である。霧は日射を遮り視程を悪化させ人間活動に重大な影響を及ぼしており、精度良い霧の監視・予測が求められているが、そのために必要な霧の構造と気象場に関連する知識は著しく不足している。
 本研究では、霧の空間的な構造を短時間で測定できるリモートセンシング手法により霧の観測を実施し、また地上での気象・微物理量の直接測定を行い、リモートセンシング手法の妥当性を検証するとともに、観測された霧の構造を解析し、数値モデルで再現された気象場との関係を調べ、霧の構造のモデル化を図ることを目的とする。
霧の有効半径(上)と霧水量(下)の時間変化例。地上の直接観測(青)とリモートセンシング(赤)の比較。  
研究内容・成果  年間100日以上霧が発生し、その大部分が暖候期に発生する北海道太平洋沿岸の釧路空港周辺を観測対象とした。観測サイトを釧路空港の南約5kmの沿岸(白糠郡白糠町内)に設営し、2002年7月下旬から8月にかけて特別観測を実施した。ここでは気象や雲・霧の微物理量、エアロゾル量の現場観測を実施した。観測サイト周辺約10km四方の領域に自記温湿度計を展開して、気温・湿度の分布を調べた。霧の発生中に移動観測を行い視程分布を調べた。
 本観測にあわせてシーロメータによる霧の鉛直分布の観測、釧路空港の霧観測レーダーによる観測が行われた。両者のデータにより、霧水量と有効半径のリモートセンシングを行った。これらの値を地上で直接測定された霧の微物理量と比較した。両者は必ずしも一致しないが、リモートセンシングの精度の問題によるのか、リモートセンシングで観測される上空と直接された地上付近での霧の微物理量の構造的な違いによるのかは今後の課題である。
 移動観測では霧が沿岸部で濃く、内陸に行くに従い薄くなる傾向が見られた。
 視程100m以下の濃霧がたびたび観測されたが、こうした場合、霧水量はそれほど多くなく、有効半径が数μm程度と小さいことがわかった。
 北海道大平洋沿岸の霧の構造の特徴の一端が明らかになったが、今回の観測期間中には典型的な移流霧が発生しなかったなど、この地域の霧の特徴を記述するにはさらに事例を積み重ねる必要がある。また今後はこれらの特徴を気象場と関連づけて記述し、霧の発生機構の解明、数値気象モデル等を用いた霧の予測技術開発の基礎とすることが必要である。
霧の有効半径(上)と霧水量(下)の時間変化例。地上の直接観測(青)とリモートセンシング(赤)の比較。