共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

防雪林等の風洞実験における相似則に関する研究
研究代表者/所属 北海道立林業試験場
研究代表者/職名 研究職員
研究代表者/氏名 鳥田宏行

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

佐藤威 防災科学技術研究所雪氷防災研究部門 新庄支所長

2

小杉健二 防災科学技術研究所雪氷防災研究部門 主任研究員

3

西村浩一 防災科学技術研究所 主任研究員

研究目的 防雪林は,高い防雪効果に加えて景観機能や環境保全機能(環境復元による小動物への寄与など)がある。近年,地球温暖化が大きな問題となっているが,二酸化炭素の吸収源としても,新たな機能が期待できる。防雪林の防雪機能に関しては,過去の研究からある程度定性的な事がわかっているが,定量的な理解にまでには至っていない。定量的解析を進めるのに有効な方法としては、風洞施設を用いたモデル実験が考えられるが、モデルと現実との対応を示す相似則に関して未解明な部分が多いため、モデルの再現性を理論的に説明するのが困難である。そこで本研究では、モデル実験の信頼性を高めるため、この相似則について検討する。
  
研究内容・成果 研究内容
モデル実験と現実(プロトタイプ)との現象を比較検討するため,過去におこなわれた野外観測結果をモデル実験で再現することを試みた。野外観測は,北海道天塩郡中川町の平坦地に,アカエゾマツ約90本(平均樹高2.2m)を千鳥格子状に3列植栽し,その周辺に観測機器を設置して行なわれた。観測地は,冬期間は西〜西北西の風が卓越するため,試験林帯はこの卓越風に垂直になるように配列されている。一方,モデル実験は,樹冠がブラシ状になっていて通風性がある市販の針葉樹模型(樹高:17cm,樹冠幅:6cm,枝下高:1.5cm)を用いて,野外と同じ配列で雪粒子を用いた吹雪風同実験を行なった。

研究成果および今後の課題
 モデルとプロトタイプにおける吹きだまりの形状と吹きだまりの形成時間および基準風速を,主に防雪柵について検討された相似則(Anno,Cold Regions Science and Technology,9,1984,179-181)を適用して比較すると,以下のような結果となった。(1)吹きだまりの形状:風下側に形成される吹きだまりのピーク値とその位置関係は概ねモデルで再現されていたが,林帯から離れた風下領域では再現性が低くなった。(2)吹きだまりの形成時間:相似則から,求められたプロトタイプの吹きだまり形成時間と実際に観測した時間は,比較的適合した。(3)基準風速:実験の基準風速を用いて相似則から推測されたプロトタイプの風速は,実際の野外観測で得られた風速よりも10%ほど低くなった。今回検討した相似則は,前提として,モデルの形状とプロトタイプの形状が完全に一致していることが必要であるが,防雪柵に比べて複雑な形状を持つ防雪林を,モデルで完全に再現することは困難である。今回の実験で再現性が低かった部分は,モデル形状とプロトタイプ形状の差異が影響している可能性がある。今後,防雪林のモデル実験に関する相似則を検討するあたり,まず防雪林の構造そのものを,葉面積密度(LAD)などの指標を用いて、定量化を進めることが必要と考えられる。