共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

積雪寒冷森林流域における溶存炭素・窒素流出フラックスの解明
研究代表者/所属 北大北方生物圏フィールド科学センター
研究代表者/職名 助教授
研究代表者/氏名 柴田英昭

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

野村 睦 北大北方生物圏フィールド科学センター 助手

2

小林大二 北大 名誉教授

3

高木健太郎 北大北方生物圏フィールド科学センター 助手

4

石井吉之 北大低温研 助手

研究目的  森林から河川への生元素流出を明らかにすることは、流域レベルでの物質収支の定量的評価のみならず河川生態系や下流の陸水生態系への栄養源、エネルギー源供給の面からも重要である。河川への溶存成分の流出には所与の気候、地質、土壌、植生といった立地環境や降雨―流出の水文過程や大気降下物なども影響しているといわれている。また、近年では河川近傍の河畔帯における水質変化が河川水質の形成にとって重要であるといわれている。本研究では、積雪寒冷地域の森林流域における河川への溶存炭素・窒素の流出機構を解明するために、雨龍研究林内の複数流域における河川水の溶存成分濃度およびフラックスを比較観測した。
  
研究内容・成果  雨龍研究林内の四次河川において本流および支流の河川水質の空間変異と植生や地形との関係を明らかにするために、空中写真を用いた植生区分および国土数値情報の標高メッシュから得られる地形指数(Topographic Index)と水質との比較を行った。その結果、地形指数が大きい(傾斜が緩やかで、集水面積が大きい)ほど、河川水に含まれる溶存有機炭素濃度が高まり、硝酸イオン濃度が低くなる傾向にあった。当該流域の下流平坦部はアカエゾマツ-ササを中心とした湿地林が広がっており、そのような河畔飽和帯が存在することによって、未分解有機物(泥炭)からの溶存有機物供給が生じているものと推察された。また、河畔飽和部では比較的嫌気的な条件にあると考えられ、脱窒などの窒素除去メカニズムも重要であることが示唆された。流域内の植生分布は標高と有意な相関関係にあり、土壌水分や気候条件などの影響によって植生の変化が起こり、その結果として河川水質の広域変異にも影響を及ぼしていることが示唆された。水質の季節変化からは、融雪時や秋季の出水時に硝酸イオン濃度などが上昇する傾向が認められ、流量の増加に伴って流域から高濃度の溶存窒素が放出されていることも明らかとなった。