共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
道東湿原の植生モニタリングのための高解像度リモートセンシング手法に関する研究 |
研究代表者/所属 | 東京大学大学院 農学生命科学研究科 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 佐藤洋平 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
塩沢昌 | 東京大学大学院 農学生命科学研究科 | 助教授 |
2 |
吉野邦彦 | 筑波大学 社会工学系 | 講師 |
3 |
宮本みちる | 東京大学大学院 | 博士課程 |
4 |
串田圭司 | 北大低温研 | |
5 |
福田正己 | 北大低温研 |
研究目的 | 湿原植生モニタリングのための的確な面的・空間的モニタリングの計測手法を確立させ、多空間スケール測定の評価を行うこと。異なるスケールからの観測アプローチによる高空間解像度リモートセンシング・データを用いて、群落を構成する各植生パターンの詳細(群落構成要素)を把握し、観測又は推定可能な植生項目を明確にし、湿原植生モニタリングのための基礎的手法を確立及び測定の評価をすること。また、湿原全域の保全指定植生マッピングを行い、分布パターンの詳細を明らかにする。具体的には、グランド・トゥルース、係留型気球から撮影された高解像度空中モザイク写真の判読、航空機近赤外ビデオ画像や衛星画像SPOTの植生分類を行う。 |
研究内容・成果 | 研究の内容: スケール1:湿生植物タイプごとの近接分光反射特性(地上3m)を明らかにした。赤沼木道沿いと東西に200m・3本のトランセクトに対して方形区を計97ケ所設置し、単純任意抽出法による植生調査とGPS観測を行った。スケール2:係留型気球鉛直写真 (高度100m) (1998年撮影)は、幾何補正されERDAS IMAGINによりモザイク処理された。気球空中写真(15cm/pixel)から、グランド・トゥルース(2001年・夏季)及び判読結果に基づき、ArcView GISによりデジタルマップを作成した。また、湿原保全指定植生マップを作成し、Patch Analystを用いて、空間分布解析を行った(図1)。スケール3:航空機可視・近赤外ビデオ(高度900m)により、鉛直方向からのみ捉えたマルチスペクトル分光反射に加え、複数角方向からの分光反射特性を捉えることで、湿生植生タイプ別の抽出に有効な波長帯、植生指数、観測角領域の特定を行った。スケール4:SPOT(XN)により異なるセンサのデータ・フュージョンから特異的な湿原植生の把握を試みた。 成果: 植生調査から58種が同定され、草本(カヤツリグサ科10種とイネ科6種、その他多年草23種)、低木(ハンノキ、ヤチヤナギ)、小低木(ツツジ科6種)、矮生低木4種、コケ9種に分類された。その内、15科25種が保全指定植物であった。また、面的空間解析を行った結果、全部で4821あり、高層湿原植生のパッチ数は多いが、平均パッチサイズは10m2以下であった。また、パッチサイズ(計5タイプ)のばらつきは少ないが、平均形状指数が1.5であり、中低層湿原よりも複雑なパッチの形状であることが示された。一方、中低層湿原植生のパッチサイズは300-400m2と広範であるが、クラス間のサイズのばらつきが大きかった(図2)。また、保全種を含む群落は、複雑な形状をしていた。気球観測により、特定領域の湿原植生分類に有用な情報を取得することが出来た。 可視・近赤外航空機観測では、バンド比演算処理により、NDVI、VI, Green/ Red, Red/ NIR に関して鉛直と多方向データが使用された。赤沼から木道西部、北東部の中層湿原植生の矮生低木及びスゲの混在植生において抽出が顕著であるが、ミズゴケと単子葉草本、高山植生は、複数角観測を行わなくても判別が可能であった。これは、地上分光観測でも同様の結果で、低木に比べ層内の多重散乱が少なく、角度方向からの観測に依存しないためと予測された。 衛星画像SPOT(XN) (1996年・2000年6月)において、赤沼から温根内の領域は、7タイプ17カテゴリーに分類された(図3)。パッチサイズが25-100m2以上の多年草、チトウ、コケ及びツツジ科の低木など、局所領域での消長が明らかとなった。現在、湿原保全管理・復元のための局所領域の詳細なモニタリングが急務とされているため、本研究が、湿原植生の面的・空間的モニタリングを指標とした基礎的研究開発としてその成果が今後期待できるものと期待できる。 |