共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

 オホーツク海におけるメタンハイドレート自然融解量の推計
研究代表者／所属 北見工業大学
研究代表者／職名 教授
研究代表者／氏名 佐々木　正史

研究分担者／氏名／所属／職名
　
氏　　名
所　　属
職　　名

1

 遠藤　登 北見工業大学 助手

2

 白澤　邦男 北大低温研

研究目的 無海氷期、海水中溶存メタン濃度におよぼす海流の影響、特に宗谷暖流と南樺太海流の拮抗の関与を明らかにするため、紋別を定点観測地点として観測を実施する。
　海氷期、オホーツク海を経由して漂着する流氷はその途上でメタンハイドレート埋蔵海域を通過する際に高濃度の溶存メタンあるいはメタンガスに曝露され、海氷の成長と共にブライン中に濃縮されるものと考えられる。紋別は定着氷が流氷をブロックする場合が多く、この状況下での溶存メタン濃度を観測することによって海氷に随伴する異常メタンの起源を明らかにする。
　　
研究内容・成果 オホーツク海底には豊富なメタンハイドレート資源が埋蔵すると期待されている。海水中の溶存メタン分析の結果、このメタンハイドレートは自然融解して海水中に溶存し、さらに大気中にメタンガスとして放出されていることが示唆された。本研究の最終的な目的はメタンハイドレートの自然融解量およびこれに伴う大気中へのメタン放出量を把握し、地球温暖化への寄与を推計することである。
　本研究は平成12年度から開始され、2001年当初の海氷期に海氷の周辺から採取した海水中の溶存メタン濃度を観測した結果、定着氷の周辺には溶存メタンの異常は認められない一方、サハリン沖を経由して漂着する流氷塊の周囲からはバックグラウンド濃度の100倍以上にも及ぶ異常なメタン濃度が観測された。このシーズンは、紋別沿岸において流氷接岸前に定着氷が形成され、上記結論を導き出す上で非常に優れた基準定点となった。流氷中の異常濃度については、オホーツク海を経由して漂着する流氷はその途上でメタンハイドレートなど豊富なメタン源海域を通過する際に高濃度の溶存メタンあるいはメタンガスに曝露されることが原因と解釈された。
　しかし翌平成13年度において、海氷が接岸する前（01年11〜12月）の沿岸海水中からは前年には認められなかった溶存メタン濃度の異常が検出された。その結果02年当初の海氷期においても定着氷以外に目立った流氷塊が認められなかったにも拘わらず同程度の溶存メタンの異常が継続して観測された。このような年較差の要因を明らかにするために、本年度の流氷着岸前の採水はオムサロ原生花園（通称流氷岬）に定点を追加して実施したところ、平成12年度同様定着氷周囲からはメタンの異常は検出されなかった。一方、常呂〜宇登呂に至る流氷塊が座礁した海域においては座礁後急速に異常なメタン濃度を示した。その意味で本年度においても紋別沿岸は流氷に汚染されない、比較的純粋な定着氷海域として貴重な基準定点の役割を果たした。
高濃度の溶存メタンあるいはメタンガスに曝露された流氷は、その成長に伴ってブライン中に塩分と共に溶存メタンをも濃縮するものと考えられる。従来は海氷のブロックを融解させ溶存メタンを計測することにより海氷中の平均的なメタン含有量を推定していたが、ブライン中の溶存メタンを直接分析することにより流氷が漂流中に被ったメタン曝露過程を明らかにする必要がある。本年度は海氷からブラインを直接採取するには至らなかったため、引き続き平成15年度も共同研究を継続し、ブライン形成に伴う溶存気体成分の濃縮過程を明らかにしていく。