共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

氷・氷摩擦の研究とその応用
研究代表者/所属 独立行政法人産業技術総合研究所
研究代表者/職名 主任研究員
研究代表者/氏名 二瓶光弥

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

前野紀一 北大低温研

2

荒川政彦 北大低温研

研究目的  氷と他物質の摩擦メカニズムを考察する上で,氷そのものの摩擦メカニズムを把握しておく必要がある.これまでの研究では、すべり速度が極低速域での氷・氷摩擦の測定例が多く,高速域での解析例は少ない.本研究では,室内タイヤ試験機を用いて,高速域での氷・氷摩擦試験を実施し,その結果と,氷・氷の摩擦は摩擦熱で発生する水膜の粘性せん断力で決まるとした摩擦モデルと比較し,摩擦メカニズムについて考察した.
図1氷・氷摩擦試験用冶具 図2実験結果とシミュレーション結果との比較 
研究内容・成果 1.実験方法 実験方法は,室内タイヤ試験機の直径3mのドラム内面に作られた氷の上に,図1に示すような氷・氷摩擦試験機用治具を取り付け,この治具の先端に設置したスライダー氷をドラム上の氷に重りにより荷重をかけて接地させ,2分力計で接地荷重Fzおよび摩擦力Fxを計測する方式とした.実験は,温度,荷重,すべり速度を種々に変化させて実施した。
2.解析および考察 図2に,実験値とOksanenの摩擦モデル(摩擦熱で発生する水の粘性せん断力で摩擦が決まるモデル)を用いた計算結果とを比較した例を示す.これより,特にすべり速度が大きい範囲においては,計算値と実験値がほぼ一致していることが判る.したがって,高速域における氷・氷摩擦は摩擦熱で生じる水の粘性せん断力による摩擦の影響が大きいと考えられることが判った.氷とタイヤ(ゴム)の高速域での摩擦も,この氷・氷摩擦の結果と同様であり,摩擦熱による水の影響が大きいと言える.一方,すべり速度の小さい,低速域では,氷・氷の摩擦,氷・タイヤの摩擦でもモデルとあまり一致しないということが判った.これは,すべり速度の小さい範囲では,摩擦のメカニズムが高速の場合と異なっていることを示している。
3.まとめおよび今後の課題 今回行った氷・氷摩擦の解析結果をまとめると,すべり速度の大きい高速域においては,摩擦熱で発生する水の粘性せん断力による凝着摩擦の影響が大きいが,すべり速度の小さい低速域においては,その影響が小さいさいことが判った.したがって,すべり速度が小さい範囲では,氷そのもののせん断応力による凝着摩擦の影響が大きいと考えられることが判った.しかし,氷・氷の摩擦における真実接触面積の確認や低速域での摩擦メカニズムでは不明な点が多く、これらの充分な解析は今後の課題となっている.

【参考文献】
1)N.Mizukami,N.Maeno:Normal stress dependence of ice-ice friction coefficients, 雪氷,62巻6号(2000年11月)p515-521
2)G.Casassa,H.Narita,N.Maeno:Shear cell experiments of snow and ice friction, J.Appl.phys.,Vol.69,No.6,15 March 1991p3745-3756
3)P.Okusanen,J.Keinonen:The Mechanism of Friction of Ice,In M.E.L,19 November 1990p2-5
4)二瓶光弥,清水健一:タイヤの氷上性能への摩擦熱の影響,自動車技術論文集,Vol.28,No.1,January,1997
図1氷・氷摩擦試験用冶具 図2実験結果とシミュレーション結果との比較