共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

植生のスペクトル反射特性解析および寒冷圏への応用
研究代表者/所属 金沢大学工学部
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 村本健一郎

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

久保守 金沢大学工学部 助手

2

串田圭司 北大低温研

研究目的 地球温暖化で森林の役割が注目される中で、アラスカやシベリアなど北方の広大な森林の重要性が指摘されているが、その影響や変動などは未知な部分が多い。近年、地球観測衛星による効率的な森林観測が期待されているが、森林は、土壌や林床、樹木の形態、林相などの違いによって多種多様であるため、衛星によって取得されたスペクトル特性から森林の状態を推定するのは簡単ではない。本研究の目的は、森林状態を把握するための手法を開発し、寒冷圏の森林へ応用することである。まず、画像処理手法を使った森林の空間的構造の解析手法を開発する。また、森林のスペクトル反射特性を地上と衛星で測定し、植生の分光反射モデルを構築する。
  
研究内容・成果 へリコプターを使って森林を低高度から撮影し、高解像度画像を取得した。この取得画像から樹冠を検出する画像処理手法を開発した。これによって立木密度や樹冠閉鎖率などの森林の空間的な状態を定量的に把握することが期待できる。

携帯型スペクトロメータとデジタルビデオカメラを同時に使って森林を観測した。樹木の形態や林相によって観測画像中のテクスチャが異なることを利用して、空間的濃淡パターンの特徴量を算出する手法を開発した。さらにスペクトル特性と比較検討した。これによって樹種判別や樹林地・伐採地・枯損などの被覆分類が期待できる。

樹木の構成要素の分光特性を基礎にした放射伝達モデルを使って、現地観測データと衛星データとの対応を検討した。亜寒帯では、タイガと呼ばれる針葉樹の広大な疎林地帯がある。このタイガ森林では、針葉樹の樹冠形は先のとがった円錐形で、樹冠が互いに触れ合っておらず、林冠は閉鎖していないため、日射が林床に到達し、衛星データから森林の状態を推測するには、苔などの林床植物を考慮したモデルが不可欠である。林床植物や葉のスペクトル反射特性の地上測定には、携帯型スペクトロメータを使用して行った。土壌、林床、葉の反射率と透過率、樹木形態などをモデル化し、放射伝達特性から求めた算出値と衛星データを比較した。これによって衛星データから地上の植生物理量を推定することが期待できる。

亜寒帯の広大な針葉樹林は熱帯雨林とともに地球上の大きなバイオマスを形成し、地球環境において大きな役割を果たしている。近年、大規模な森林火災が問題となっており、地球環境への影響が心配されている。森林火災地域に対する衛星データを調査し、衛星による広範囲の森林監視について検討した。

画像処理による樹冠検出と被覆分類の手法を衛星データにスケールアップし、タイガ森林に応用することで、衛星データからの高精度な植生物理量の推定や火災地域の監視が期待できる。