共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
氷成長界面前面での溶質成分の蓄積挙動と界面による微細粒子の捕捉押出し現象との関係 |
研究代表者/所属 | 九州工業大学工学部物質工学科 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 向井楠宏 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
雷澤しん | 九州工業大学 大学院 | 博士後期課程二年 |
2 |
中大路裕貴 | 九州工業大学 大学院 | 博士前期課程一年 |
3 |
古川義純 | 北大低温研 |
研究目的 | 平成13年度には、航空機実験を用いた微小重力環境下での実験により以下のことを明らかにした。すなわち、表面活性剤水溶液の凝固界面前面に形成される濃度境界層中の微細気泡には、気泡表面に溶質の濃度勾配に起因する表面張力勾配が生じ、それが駆動力となって、気泡が界面に引き寄せられることが明らかになった。 平成14年度は、固体(グラファイト)微粒子が純水中温度勾配に起因する界面張力勾配下でどのように振る舞うかを、航空機実験を用いた微小重力環境下と地上の1G下において、平成13年度と同一の装置を用いて明らかにすることを目的とした。 |
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研究内容・成果 | 石英ガラス製セル内純水に、ペルチェ素子を用いて、定常的な温度勾配をつけ、その中に数十μm径のグラファイト粒子を懸濁させ、その挙動を、航空機実験による微小重力環境下で直接観察した。航空機実験は計3フライト(1フライトあたり、10〜15回の放物線飛行)行った。しかし、飛行時、進行方向への加速度が作用することによって、グラファイト微粒子がセル壁面に移動、付着し、十分な観察結果が得られなかった。ただ、記録されたビデオ映像からして、微小重力下でも数個のグラファイト微粒子が、温度の高い方へ動く事実を確認することができた。 次に航空機実験に用いたのと同一の装置を用いて、地上の1G下における温度勾配のもとでのグラファイト粒子の沈降挙動を等温系のそれと比較することにより調べた。その結果、温度勾配が垂直に存在する系(上方が高温)における純水中のグラファイト粒子の沈降速度は、温度勾配が存在しない場合に比べて、実験誤差以上の速度低下を示すことが明らかになった。この結果は、温度勾配により生じる界面張力勾配に起因する駆動力がグラファイト粒子に働くと見なせることを示している。沈降速度の低下量は温度勾配およびグラファイト粒子の粒径が大きくなるにつれて大きくなり、この結果は我々がすでに提唱している理論式を用いて定性的によく説明できる。しかし、定量的検証についてはなお、今後の研究課題として残されている。昨年(平成13年)度の微細気泡に加えて、固体微粒子も界面張力勾配のもとで運動し得ることが明らかになり、これらの成果は氷の凝固現象に関与するだけでなく、材料製造プロセスなどの工学分野、あるいは生物、医学、土壌学等の自然界の現象一般に広く関わっている可能性がある。 |
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