共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
Lバンドレーダによる氷河・氷床内部構造の研究 |
研究代表者/所属 | 地球研 |
研究代表者/職名 | 学振特別研究員PD |
研究代表者/氏名 | 松岡健一 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
|
所 属
|
職 名
|
|
1 |
成瀬廉二 | 北大低温研 | 助教授 |
2 |
白岩孝行 | 北大低温研 | 助手 |
研究目的 | 氷河氷床から取得されるアイスコアは、高い時間分解能を持ち、大気成分を直接保存していること等から、古気候復元に大きな役割を果たしてきた。近年では、強風や融解の影響によって、堆積環境や浅層における諸過程がより複雑となる地域でもコアが取得されている。したがって、氷河氷床の浅層構造を空間的に観測し、コア掘削地点を最適化することが求められている。本研究では、氷河氷床の浅層部に記録された過去の堆積環境を高周波レーダを用いて調べることを目的とする。 |
|
|
研究内容・成果 | 雪氷をレーダで観測する方法は2つに大別できる。一つは積雪表面にレーダを設置し、雪氷体内部からの後方散乱電波を調べる方法であり、従来から用いられている。もう一つはボアホールレーダと呼ばれる。2つの掘削孔に送受信機をそれぞれ下ろし、前方散乱波(透過電波)を調べる方法である。送受信機の深度を変化させて観測し、トモグラフィーにより2つの掘削孔間の誘電率実部と虚部の分布を得ることが出来る。2つの方法を比較すると、後者の方が空間分解能に優れている一方、観測には掘削孔が必要となる。従って、前者の手法で広域を調査し、掘削候補地点を絞り込んだ後に後者を用いることが想定できる。後者の方法は資源探査や遺跡調査などでは実用されているが、雪氷の観測には全く用いられていない。そこで、特に後者について研究を進めた。 まず商用のボアホールレーダの低温試験を実施した。出力レベルや実際の観測を想定した様々な動作試験を、-25度まで実施し、動作を確認した。-25度においても連続2-3時間の運用が可能であった。 次に、トモグラフィー処理の方法について理論的検討を行った。1回の観測で得られる物理量は、電波の遅延時間と強度である。ここでは第一到達波のみを考え、それより遅延した部分は考えない。また、強度に着目すると、送信機強度の安定性やアンテナの方位依存性など、様々な装置依存要因が生じる。そのため、初期段階として、本研究では遅延時間のみを用いて、掘削孔に挟まれた2次元空間の速度分布を得ることに注目した。密度変化の激しい浅層部においては、密度が速度の支配的要因であることから、速度トモグラフィーにより密度の空間分布が得られると期待できる。地震波と電磁波を用いた地殻トモグラフィーで実用されているtransform法, Backus and Gilbert法、Tarantola and Valette法、series-expansion法について比較検討した結果、transform法およびseries-expansion法が、雪氷の密度構造を考えたとき、最も誤差が少なく構造を推定できることが分かった。具体的な構造を与えてのforward modeling, inverse modelingによる手法の詳細な検討は今後の課題である。 |
|