共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

魚眼レンズイメージとレーザー測距計を用いた樹冠冠雪量の推定
研究代表者/所属 島根大学生物資源科学部
研究代表者/職名 助教授
研究代表者/氏名 橋本 哲

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

兒玉裕二 北大低温研 助手

研究目的  森林への冠雪量は,アルベドや冠雪の蒸発による潜熱輸送へ多大な影響を与え,森林地帯における積雪期の水・熱循環にとって重要な要素となっている.森林冠雪量や冠雪蒸発量についての研究は普遍的な結果を得るにはいたっていない.森林冠雪量は,森林冠雪の蒸発量を評価してゆくための第一歩である.しかし,流域での冠雪量分布を推定する手法は確立されていない.本研究は,魚眼イメージやレーザー測距計を用いて対象林分の冠雪量を簡便に推定することを目標にしている.
図1 有効PAIの鉛直分布の推定結果 図2 冠雪量の鉛直分布の推定結果 
研究内容・成果 1.計測方法
 森林冠雪量の推定対象林分は北海道大学低温科学研究所母子里融雪観測所に隣接するアカエゾマツ林(樹高約18m)である.この林分内に10m×16mのプロットを設置した.観測日は,2002年12月2日,2003年2月25〜2月27日である.
 12月2日,2月の25日,27日に,魚眼天空イメージによるプラントエリアインデックス(以後,PAI)の推定およびレーザー測距計による有効PAI(以後,ePAI)の鉛直分布の推定のための計測を行った.計測点はともに本プロットの中央と4角である.設置高は雪面上70cmである.魚眼天空イメージは樹冠の隙間が白,冠雪と樹体は黒となるように二値化し,これを用いてPAIをもとめた.レーザー測距は天頂角60度に向けてプロット内を対象に5点で約1000回行った.鉛直方向の各層(1m)について,レーザー光が通過する確率からePAIをもとめた.なお,レーザー光は樹冠により遮断され樹高約10mまでしか到達しなかった.
 2月26日にはプロット内の樹高9.3m以下の冠雪量の直接的推定を行った.プロット内の樹木21本から代表木4本を選び,雪面から樹高5.3mまで(以下,下部)の冠雪と樹高5.3mから9.3mまで(以下,上部)の冠雪を採取した.その直後に,プロット内の樹高9.3m以下の全ての冠雪を落とした.採取した冠雪重量から上部と下部の冠雪量を算出した.

2.冠雪量の推定結果
 雪下ろしによる2月26日の推定冠雪量は下部で3.0mm,上部で0.5mmとなった.
 図1はePAI鉛直分布の推定結果である.7.3m〜8.3mの層から葉層が出現している.2月27日のePAI分布は樹体だけのものであり,各層で最小値を示すはずであるが,2つの層で最小値とならなかった.上部と下部のePAIについて,2月26日と27日の差と雪下ろしによる推定冠雪量からePAIあたりの冠雪量を求めると,上部で3.5mm/ePAI,下部で12.7mm/ePAIとなった.図2はこの値を用いた冠雪量鉛直分布の推定結果である.両日の冠雪量の差は主として樹高5m以下の冠雪量の差によっている.
 PAIの推定値は,12月2日で5.44,2月25日で5.71,2月27日で5.37となった.上記と同様に上部下部の合計値としてPAIあたりの冠雪量を求めると,10.3mm/PAIとなった.この値から12月2日の冠雪量を推定すると0.7mmとなった.ePAIによるこの日の冠雪量は樹高9.3m以下で1.3mmとなり,比較的近い値となった.
 レーザー測距計による手法は,魚眼イメージによる手法に比べて,鉛直分布が推定できることと,より詳細な樹冠構造の解析が可能である点で優れている.森林空間の中でより多くの測距が簡単にできる装置が必要である.同時に冠雪量の実測データの取得が重要である.
図1 有効PAIの鉛直分布の推定結果 図2 冠雪量の鉛直分布の推定結果