共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

 寒冷域の雲とエアロゾルの光学的特性に関する研究
研究代表者／所属 富山大学教育学部
研究代表者／職名 講師
研究代表者／氏名 青木一真

研究分担者／氏名／所属／職名
　
氏　　名
所　　属
職　　名

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 藤吉康志 北大低温研 教授

研究目的 寒冷域における雲とエアロゾルの光学的特性に関する観測は、今まで、あまり行われてこなかったのが現状である。特に、本研究のように太陽光を利用した高緯度地域の観測は、この地域における日射時間が少ないことから、なかなか長期モニタリングによってたくさんの情報を得ることが出来ない。我々は、1997年より札幌上空のエアロゾルの光学的特性のモニタリングを太陽の直逹光と周辺光を7波長で測定出来るSky radiometerを使用して継続している。本研究は、この観測を引き続き行い、雲とエアロゾルの光学的特性の時間変動について、短期イベントや長期変動の特徴を調べることが目的である。
　　
研究内容・成果 本研究の内容は、1997年7月から北海道大学低温科学研究所屋上にて、札幌上空のエアロゾルの光学的特性のモニタリングを行って来たものを継続して観測し、それら得られた長期モニタリングのデータから寒冷域における雲とエアロゾルが気候にどう影響するかについて調べることである。観測測器は、太陽の直逹光と周辺光の角度別分布を7波長（315， 400， 500， 675， 870， 940， 1020 nm）で測定出来るSky radiometerを使用した。この観測機器は、自動測定で観測が出来るように設計されており、雨の場合には鏡筒に雨がはいらないように、雨センサーが取り付けてあり、鏡筒が自動的に下を向くようになっている。また、北海道のように夏と冬の気温差が大きい場合でも、センサーを温度コントロールして、測定出来るように設計されている。このような観測機器を使い、現在もエアロゾルの光学的特性の観測を継続的に行い、得られたデータの解析からエアロゾルの光学的特性の時間変動について示している。得られた結果の季節変化を見ると、毎年、エアロゾルの光学的厚さは、春に高く、秋に低い傾向を示している。また、エアロゾルの粒子の大小を見るのに便利なオングストローム指数の変化は、夏に高く、春に低い傾向が示された。このような季節変化は、定量的には年によって若干変わっているが、季節変化の傾向は、観測以来、同じような傾向が示されている。このような季節変化を考えると、春に光学的厚さが高く、オングストローム指数が低いことが示されたことで、比較的大きな粒子（数μm程度）の粒子がこの時期に光学的厚さを高めていると考えられる。体積粒径分布の結果を見ると、半径2〜3μmを中心とした大粒子の増加が顕著であり、大陸からの黄砂粒子の影響していることを示唆する。特に、今年度は、今までにない黄砂現象の年で、2002年3月22日を中心とした黄砂は、札幌市内に大量の砂塵が降り注いだ。この様子は、ホームページ（http://stellar.lowtem.hokudai.ac.jp）に写真を掲載した。夏のオングストローム指数が高い理由として、小粒子による、すなわち、都市大気特有の人為起原による汚染物質が影響していることを示唆した。これからもさらに、観測を継続し、データを蓄積することにより、札幌における長期変動を示すことが出来、他の地上観測や衛星観測、数値モデル、とりわけ気候変動予測の基礎的データの提供にもつながると考えている。