共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

シベリアの氷河研究
研究代表者/所属 北大低温研
研究代表者/職名 助教授
研究代表者/氏名 山田知充

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

01

高橋修平  北見工業大学  教授 
02 藤井理行  国立極地研究所  教授 
03 白岩孝行  北大低温研  助手 
04      
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研究目的 氷河の気象・水文・氷河動力学過程の観測、および氷コアの掘削と解析から、環オホーツク陸域雪氷圏の、特に極東シベリアにおける過去数百年間の氷河変動及び気候、環境変動を解明し、当該地域の氷河に代表される雪氷圏が近年の気候変動に対し、どのような応答をしているか明らかにすることを目的とする。
  
研究内容・成果 2001年7月に研究代表者の山田と分担者の高橋・白岩の3名が、ロシア科学アカデミーの研究者5名の協力を得て、約2週間の現地調査を実施した。実際に訪れた氷河は、ヤクーツクの東方約500kmにあるスンタル・ハイアタ山脈のNo.31氷河である。同氷河において、気象観測、氷河の消耗量観測、氷河の表面積雪サンプリング、氷河形態の測量を実施した。2001年夏は例年にない猛暑がシベリア地域を襲い、このため、氷河上は消耗域と涵養域とに関わらず、完全に融解状態にあった。No.31氷河は寒冷氷河であるため、掘削作業時に表面の融解水が掘削孔に浸透し、これが凍結して掘削ドリルが抜けなくなるなど、現地での試験掘削は困難であった。しかし、このような融解が頻繁に生じるとすると、融解水が流下してしまうため、氷コア掘削による古気候・古環境復元はこの氷河では難しいと判断せざるを得ない。
 No.31氷河は1957-1959年にかけての国際地球観測年に共同研究者らによって形態測量が実施されている。今回の調査では同様の氷河形態測量を実施し、1959年から2002年にかけての氷河変動を解析した。その結果、この40年間に氷河末端は200m後退し、氷河表面は平均で20m低下した。シベリアにおける最近30年間の気温の変化状況に照らし合わせると、この氷河の後退は、夏期の約1℃程度の温度上昇と冬期の若干の降水量減少によって引き起こされたものだと結論される。
 以上のような現地調査の結果を踏まえ、平成14年3月に分担者の高橋修平が低温研を訪れ、今後のシベリアでの氷河研究について議論を行った。また、今回の予察調査の結果は、(社)日本雪氷学会の英文誌であるBulletin of Glaciological Research No. 19 (2002), 101-106に公表した。