共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

降積雪の相違が”Acid Shock”の発生に及ぼす影響評価
研究代表者/所属 福井工業大学建設工学科
研究代表者/職名 助教授
研究代表者/氏名 宇治橋康行

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

01

高島正信  福井工業大学建設工学科  講師 
02 石川信敬  低温科学研究所  助教授 
03 児玉裕二  低温科学研究所  助 手 
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研究目的  寒冷な欧米の積雪地域では酸性化した積雪層から春先の融雪初期に多量の酸性化物質が流出Acid Shockが発生し,その生態系への影響が問題となっている。わが国の豪雪地域においても降積雪の酸性化が確認されている。しかしながら,北海道のような寒冷地と北陸のような暖地積雪地域とでは気象条件に大きな差があるため,降雪,融雪特性及び積雪の酸性化の様相は多種多様である。このような多種多様な自然,環境条件,特に,寒冷地と暖地の気象特性の差異が降積雪特性および融雪期のAcid Shockの発生にどのような差異を生むかを考究する。
  
研究内容・成果 研究内容
 暖地積雪地域および寒冷積雪地域の代表としてそれぞれ北陸石川県白山麓および北海道母子里を調査対象地点として選定し,積雪の消長過程に伴う酸性化物質の堆積・移動過程,すなわちAcid Shockの発生の有無やその実態を積雪断面観測を通じて明らかにし,降積雪条件の相違との関連を解明する。

研究成果
 平成13年度冬季は,北陸地方は暖冬小雪であったためほとんど現地調査は実施出来なかったが,これまでの観測データの分析から,積雪の比較的早い時期から降雪,融解を繰り返し,しまり雪とざらめ雪の互層が発達し,また,氷板層も見られる。このような積雪互層の発達に伴い水みちが形成され,融雪水は積雪末期の全層均一なざらめ雪層になる時期を除けば,融雪水は,融雪期以前にも水みち流下により流出し,顕著なAcid Shockは見られない。積雪下層でのライシメータ等による融雪水の採取を行なっていないため,流出融雪水の濃度は不明であるが,全層平均濃度より高い濃度の融雪水が流出するとすれば,上層の高い濃度の積雪層の融解と流下による可能性がある。ことが明らかになった。
 母子里においては,積雪の増加期に互層が形成されるがこれは新雪密度の相違によるものであり,北陸のようなしまり雪とざらめ雪の互層は見られない。融雪水の流出については北陸同様,水みち流下が主体であると考えられ,Acid Shock発生の可能性が示された。

今後の課題
 より短い時間間隔での断面観測とライシメータによる積雪下層での融雪水の秋水とその化学成分の分析および室内実験等も合わせAcid Shockのメカニズムを解明する必要がある。