共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

積雪流域における化学物質の循環過程
研究代表者/所属 信州大学理学部
研究代表者/職名 助教授
研究代表者/氏名 鈴木啓助

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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石井吉之  北大低温研  助手 
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研究目的 水循環過程において、雪は雨と異なった働きをする。つまり、地表面に降下した雨は、窪地などでの一時的な貯留を除くと、土壌中を浸透し地下水を形成し、河川水となって流出する。ところが、雪はある期間地表面に堆積し、融雪という過程を経てから流出する。この融雪過程で化学物質の濃縮が起こるために、「Acid Shock」と呼ばれる酸性の強い融雪水が流出し、北欧や北米などで陸水生態系に大きな影響を与えてきた。このように、積雪流域における物質循環については解明すべき問題が数多く残されている。そこで、わが国有数の多雪地域のひとつで、寒冷の度合いも大きな母子里流域において化学物質の循環過程を明らかにすることを目的とする。
  
研究内容・成果  積雪地域における水循環の特徴は、厳冬期にも地面融雪によって安定的な流量が確保されていることと、融雪期には比較的長期にわたり流量の多い状態が継続することである。特に、梅雨や台風の影響の少ない北海道においては、年間の流出量のほとんどを融雪流出が占めている。さらに、年間降水量の中で冬季に雪としてもたらされる量が多く、それによって降水とともに地表に降下する化学物質(湿性沈着物)量も冬季に多くなる。それらの化学物質は、寒冷積雪地域の厳冬期には積雪中に保存され、融雪期になって初めて積雪から流去する。その際に、融雪初期に高濃度の化学物質を含む融雪水が積雪から流下し、融雪の進行とともに低濃度になる。これに対応して、岩石土壌からの溶出のないCl-などの河川水中の濃度も、融雪初期に高く次第に低下する変動を示す。一方、岩石土壌からの溶出によるHCO3-などは、融雪水の流出に従って河川水中の濃度が低下し、融雪期の終了とともに再び増加する。それに対して、温暖積雪地域では真冬の間にも時々積雪表面での融雪が起こり、水と化学物質が積雪中から流去する。さらに、温暖積雪地域では梅雨や台風の影響もあり、水と化学物質の循環に占める雪の影響は相対的に小さくなる。しかしながら、温暖積雪地域においてもある程度の積雪深があれば、融雪による化学物質の濃縮効果が認められ、融雪初期に河川水のpHが一時的に低下するなどの現象が認められる。