共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

クラウディーバンドの精密測定法の開発
研究代表者/所属 北見工業大学
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 庄子仁

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

01

本堂武夫  北大低温研  教授 
02 成田英器  北大低温研  助教授 
03 百武欣二  北見工業大学  文部科学技官 
04 宮本 淳  北見工業大学  学振特別研究員 
05 下原喜美子  北見工業大学  博士課程2年 
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研究目的 1. 研究目的
グリーンランドGRIPコアの氷期中の氷に観察されるクラウディー・バンドと呼ばれる白濁層と透明層の縞模様の間隔は氷の年層の厚さに近いことから,この構造には季節変動情報や堆積環境情報を含んでいる可能性がある.本研究では白濁層と透明層で異なる空気含有物の数密度や分布,結晶C軸方位分布を詳細に測定し,クラウディー・バンド構造の形成過程,結晶組織の発達過程を明らかにすることを目指す.
  
研究内容・成果 2.研究内容
GRIPコアと同様にクラウディー・バンド構造が観察されているNorth GRIPコアについて,白濁層と透明層の縞模様の間隔をデジタルビデオ画像の散乱光強度から測定した.得られた間隔を年層の厚さおよびDEP変動と比較した.
 また,GRIPコア2537mのクラウディー・バンド構造を含むサンプルの長期間一軸圧縮試験を行い,結晶C軸方位分布を測定した.さらに,白濁層と透明層の結晶方位の発達過程を議論する.

3.研究成果
 North GRIPコアのクラウディー・バンド構造の白濁層と透明層の縞模様の間隔を散乱光強度から測定した結果,季節変動と考えられるパターンが得られ, DEP変動との特徴的な相関が得られた.力学試験に用いたGRIPコア2537mの結晶C軸方位分布はGRIPコアサンプル中最も単極大型を示したものである.このサンプルをコア軸から45度傾けて,ひずみ量約30%まで一軸圧縮した.この結果,ひずみ量10%までは結晶C軸方位分布にほぼ変化はなかったが,ひずみ量20%においてC軸方位がコア軸の方向に15度回転した.また,透明層の部分は結晶粒界の認識が困難になっており,ほぼ単結晶になっていが,白濁層の結晶方位分布に大きな変化は認められなかった.この結果は,白濁層内部の不純物の影響で結晶の回転が妨げられていることを示唆している.透明層で単結晶化したことから,ひずみ量30%においても再結晶していないことを表している.

4.今後の課題
透明層と白濁層の縞模様の間隔は氷床コア解析解析において目視できる年代決定情報として重要である.今後,全層にクラウディー・バンド構造の解析により数年オーダーで氷床コアに閉じ込められている環境情報シグナルの変動の議論が出来る可能性がある.画像解析においては各パラメータの閾値の検討が重要である.また,力学試験をより広範囲の結晶方位分布のサンプルで行い,結晶組織の発達について議論し,クラウディー・バンド構造を持つ氷床氷のより詳細な力学的性質を明らかにする必要がある.